森海コラム

[動物博士の生きものがたり]道具を使う海の人気者:ラッコ

[動物博士の生きものがたり]道具を使う海の人気者:ラッコ

  ラッコは、海を生活の場とするイタチ科の動物です。漢字では、海獺と書きます。海のカワウソ(獺)ということです。ラッコは、一時は全国の水族館や動物園で100頭以上も飼育され人気者になりました。しかし、アメリカの輸出禁止策で新規の飼育ができなくなり、国内で飼育されていたラッコも老衰などで死亡し、2025年には鳥羽水族館にいる2頭だけとなりました。ラッコは、北アメリカ大陸から千島列島の沿岸にかけて生息していますが、日本では20世紀初頭に絶滅したと考えられていました。近年、北海道東部で目撃があり、モユルリ島(根室市)や霧多布岬(浜中町)などで繁殖も確認されるようになったそうですが、東北地方ではほとんど目撃がありません。しかし、2018年に三陸の牡鹿半島の沖でラッコが目撃されました。左目が白く濁っていることから、2008年に同所で目撃された個体と同一である可能性も指摘されています。  ラッコは、海に浮かんで、お腹の上に石を置いて、それに貝をぶつけて割って食べるところが有名になりました。海に棲む動物で道具を使う動物はラッコだけです。しかも、ラッコは気に入った石を前足の懐の皮膚のたるみに入れて保管し、次に貝を割る時にも使ったり、貝を岸壁の石にぶつけたり、かなり高度な行動をします。ある動物園では強化ガラスに貝を叩きつけすぎて、強化ガラスにヒビをいれてしまったそうです。夜間には、コンブなどの海藻を体に巻きつけて流されないようにして眠るなど、興味深い生活をしています。ウニ、アワビ、カニ、イカ、二枚貝などの栄養価の高い食料を大量に食べ、冷たい海水に熱を奪われないように体温を保っています。 ラッコのもう一つの特徴は哺乳類でもトップクラスの体毛の密度です。鳥羽水族館の設立者の中村幸昭さんの著書では、太く長いガードヘアと、アンダーファーと呼ばれる非常に細い綿毛の2種類があり、一本のガードヘアに対して70本のアンダーファーが一つの毛穴から生えていて、全身で8−10億本にもなるそうです。そして、その密度はアザラシの2倍だそうです。一方で、皮下脂肪がほとんどありません。ですから、体毛を常に清潔に保って全身の毛に空気を貯めて体温の低下を防がなくてはなりません。そのため、ラッコは長い時間をかけて毛繕い(グルーミング)をしています。柔らかい体のおかげで、全身をくまなく毛繕いすることができます。 そして、この豪華な食事メニューと良質な毛皮が、ラッコの運命を左右することになります。良質な毛皮を取るために乱獲され、カナダのブリティッシュコロンビア州やアメリカのワシントン州などのラッコは絶滅し、日本でもほぼ絶滅してしまったのです。その後、野生動物の保護の意識が広まり、保護政策が取られました。日本でも、なんと明治45年に「臘虎膃肭獣猟獲取締法(らっこおっとせいりょうかくとりしまりほう)」という法律ができて、保護されるようになりました。 ラッコはウニやアワビを食べるために、漁業者からは「害獣」として嫌われました。ところが、ラッコと海洋生態系との関係の研究が進むと、ラッコとウニ、そしてコンブの3者の関係がわかってきたのです。ラッコが激減すると、ウニが増えて、コンブが食べ尽くされて磯焼けが起こります。コンブが減るとコンブの森で生活していた稚魚などが居なくなり、さらにコンブによるCO2の吸収が減少し地球温暖化に影響する可能性があるのです。つまり、ラッコがある程度生息していることは、海の生態系、そして温暖化対策にとって重要なことだったのです。 しかし、さらに、人間の関与を絡めるとさらに複雑なことになります。ウニは人間にとっての重要な漁業資源です。ラッコが増えすぎて、ウニが取れなくなってしまっては困ります。特に、稚ウニや稚貝を放流して育てているところでは、経済的な損失は大きくなります。一方で、コンブも重要な漁業資源です。つまり、その地域でどのような漁業資源を利用しているかによって、何を保護するのかが異なり、それによって、ラッコと生態系は大きな影響を受けるというわけです。 ラッコを含めた海の生態系を健全に保ちながら、人間が漁業資源を確保するには多くの課題があります。現在では、ラッコをエコツアーの素材に使うことでラッコの生息から経済的な価値を生み出して地域に還元する試み、磯焼けで身の詰まっていないウニの陸上での養殖の試みなどが行われているようです。漁業者が単一の漁業資源に依存するのではなくウニやコンブ、そしてコンブの森から得られる他の漁業資源をトータルに利用するような仕組みも必要だと思います。野生動物と生態系を保全しながら、地域の経済を守るためには、まだまだ工夫が必要です。 2025年12月には北海道で、海水温の上昇でウニが大発生し、磯焼けが拡大し、コンブが記録的な不漁となったことが報道されました。今後コンブの分布域が北海道からさらに北や東に移動し、北海道でコンブが採れなくなる可能性があるそうです。もっと大きな、そして深刻な変化が始まっているのかもしれません。 (写真は、AIで作成したラッコです)    南 正人:理学博士。麻布大学特命教授。軽井沢で15年間自然ガイド業を行った後、麻布大学で13年間教鞭をとる。宮城県の離島・金華山でシカの研究を35年間続けている。 「森から海へ」評議員、NPO法人生物多様性研究所あーすわーむ代表理事。

[動物博士の生きものがたり]道具を使う海の人気者:ラッコ

  ラッコは、海を生活の場とするイタチ科の動物です。漢字では、海獺と書きます。海のカワウソ(獺)ということです。ラッコは、一時は全国の水族館や動物園で100頭以上も飼育され人気者になりました。しかし、アメリカの輸出禁止策で新規の飼育ができなくなり、国内で飼育されていたラッコも老衰などで死亡し、2025年には鳥羽水族館にいる2頭だけとなりました。ラッコは、北アメリカ大陸から千島列島の沿岸にかけて生息していますが、日本では20世紀初頭に絶滅したと考えられていました。近年、北海道東部で目撃があり、モユルリ島(根室市)や霧多布岬(浜中町)などで繁殖も確認されるようになったそうですが、東北地方ではほとんど目撃がありません。しかし、2018年に三陸の牡鹿半島の沖でラッコが目撃されました。左目が白く濁っていることから、2008年に同所で目撃された個体と同一である可能性も指摘されています。  ラッコは、海に浮かんで、お腹の上に石を置いて、それに貝をぶつけて割って食べるところが有名になりました。海に棲む動物で道具を使う動物はラッコだけです。しかも、ラッコは気に入った石を前足の懐の皮膚のたるみに入れて保管し、次に貝を割る時にも使ったり、貝を岸壁の石にぶつけたり、かなり高度な行動をします。ある動物園では強化ガラスに貝を叩きつけすぎて、強化ガラスにヒビをいれてしまったそうです。夜間には、コンブなどの海藻を体に巻きつけて流されないようにして眠るなど、興味深い生活をしています。ウニ、アワビ、カニ、イカ、二枚貝などの栄養価の高い食料を大量に食べ、冷たい海水に熱を奪われないように体温を保っています。 ラッコのもう一つの特徴は哺乳類でもトップクラスの体毛の密度です。鳥羽水族館の設立者の中村幸昭さんの著書では、太く長いガードヘアと、アンダーファーと呼ばれる非常に細い綿毛の2種類があり、一本のガードヘアに対して70本のアンダーファーが一つの毛穴から生えていて、全身で8−10億本にもなるそうです。そして、その密度はアザラシの2倍だそうです。一方で、皮下脂肪がほとんどありません。ですから、体毛を常に清潔に保って全身の毛に空気を貯めて体温の低下を防がなくてはなりません。そのため、ラッコは長い時間をかけて毛繕い(グルーミング)をしています。柔らかい体のおかげで、全身をくまなく毛繕いすることができます。 そして、この豪華な食事メニューと良質な毛皮が、ラッコの運命を左右することになります。良質な毛皮を取るために乱獲され、カナダのブリティッシュコロンビア州やアメリカのワシントン州などのラッコは絶滅し、日本でもほぼ絶滅してしまったのです。その後、野生動物の保護の意識が広まり、保護政策が取られました。日本でも、なんと明治45年に「臘虎膃肭獣猟獲取締法(らっこおっとせいりょうかくとりしまりほう)」という法律ができて、保護されるようになりました。 ラッコはウニやアワビを食べるために、漁業者からは「害獣」として嫌われました。ところが、ラッコと海洋生態系との関係の研究が進むと、ラッコとウニ、そしてコンブの3者の関係がわかってきたのです。ラッコが激減すると、ウニが増えて、コンブが食べ尽くされて磯焼けが起こります。コンブが減るとコンブの森で生活していた稚魚などが居なくなり、さらにコンブによるCO2の吸収が減少し地球温暖化に影響する可能性があるのです。つまり、ラッコがある程度生息していることは、海の生態系、そして温暖化対策にとって重要なことだったのです。 しかし、さらに、人間の関与を絡めるとさらに複雑なことになります。ウニは人間にとっての重要な漁業資源です。ラッコが増えすぎて、ウニが取れなくなってしまっては困ります。特に、稚ウニや稚貝を放流して育てているところでは、経済的な損失は大きくなります。一方で、コンブも重要な漁業資源です。つまり、その地域でどのような漁業資源を利用しているかによって、何を保護するのかが異なり、それによって、ラッコと生態系は大きな影響を受けるというわけです。 ラッコを含めた海の生態系を健全に保ちながら、人間が漁業資源を確保するには多くの課題があります。現在では、ラッコをエコツアーの素材に使うことでラッコの生息から経済的な価値を生み出して地域に還元する試み、磯焼けで身の詰まっていないウニの陸上での養殖の試みなどが行われているようです。漁業者が単一の漁業資源に依存するのではなくウニやコンブ、そしてコンブの森から得られる他の漁業資源をトータルに利用するような仕組みも必要だと思います。野生動物と生態系を保全しながら、地域の経済を守るためには、まだまだ工夫が必要です。 2025年12月には北海道で、海水温の上昇でウニが大発生し、磯焼けが拡大し、コンブが記録的な不漁となったことが報道されました。今後コンブの分布域が北海道からさらに北や東に移動し、北海道でコンブが採れなくなる可能性があるそうです。もっと大きな、そして深刻な変化が始まっているのかもしれません。 (写真は、AIで作成したラッコです)    南 正人:理学博士。麻布大学特命教授。軽井沢で15年間自然ガイド業を行った後、麻布大学で13年間教鞭をとる。宮城県の離島・金華山でシカの研究を35年間続けている。 「森から海へ」評議員、NPO法人生物多様性研究所あーすわーむ代表理事。

[動物博士の生きものがたり]  南米では食用にされる世界一大きなネズミ:カピバラ

[動物博士の生きものがたり]  南米では食用にされる世界一大きなネズミ:カピバラ

今回は、カピバラという動物を紹介します。 カピバラは、最近ではキャラクター化されてグッズの販売もされるなど、ちょっとした人気者になっています。「カピパラ」とか「カビバラ」とも言われますが、英語ではCapybaraなので、カピバラが正しい名前です。南米に住んでいるのですが、南米先住民の言葉で「草を食べる者」を意味する語が、スペイン語や英語に取り入れられたとされています。   さて、このカピバラは、現在生きているネズミの仲間で最大の動物です。雌雄とも最大で体長130cm、体重60kgにも達します。写真は動物園で撮影したものですが、横に少し映っているベンチと比べると、その大きさのイメージが湧くかと思います。前足の指は4本、後足の指は3本です。   カピバラは、水辺で生活しています。水辺の柔らかい植物を好み、外敵が来ると水の中に逃げ込みます。足指には小さな水掻きがついています。さらに、目と耳と鼻が頭の上部についているので、頭の大部分を水に沈めて、目と耳と鼻を出して水中に隠れて、周りの様子を伺いながら呼吸をすることができます。食べ物も危険回避も、水辺に依存しているのです。     南米には、このカピバラをはじめとして、体長が60cmを超える大型のネズミの仲間が何種類もいます。他の大陸にも大型のネズミの仲間はいます。例えば、北米のビーバー、アフリカのヤマアラシなどです。しかし、南米ほど多くの種類の大型のネズミはいませんし、カピバラほど大きなネズミの仲間はいません。さらに、南米では体重が数百キログラムから、最大で1トン近くに達したと推定される巨大なネズミの化石も見つかっています。南米は大型のネズミが繁栄している大陸なのです。 ではなぜ南米にこのような大型のネズミたちがいるのでしょうか。南米大陸は、ある時代まで北米大陸やアフリカから独立した大きな「島」だったのです。その時代には、南米で独自に進化した有蹄類がいましたが、のちに北米から入ってきた有蹄類ほどの競争力は持っていなかったと考えられています。さらに、現代のネコ科やイヌ科のような、高度に進化した肉食獣はほとんどいませんでした。ネズミは、その頃にアフリカから、海を渡ってきたと考えられています。新天地の南米に入ったネズミは、さまざまな方向に進化しました。そして、ネズミの一部が大きくなる進化を遂げたのです。「大型で大量の植物を食べる」という生活様式をとるライバルの動物が少なかったので、ネズミの仲間の何種類かがそのような生活様式を獲得したというわけです。 ところが、その後、南米大陸は北米大陸と地続きになりました。そうすると、北米大陸から、進化したタイプの有蹄類などの草食動物が南米大陸に入ってきました。ウマの仲間やシカの仲間などです。そして、それを追って、進化したタイプの肉食獣もやってきました。このような動物がやってくると、南米の有蹄類も肉食獣も競争に負けて滅びて行きました。 大型のネズミの仲間たちも、これらの新しいライバルや捕食者と対峙しなくてはなりませんでした。先述の最も巨大なネズミは、同じように巨大な草食獣との競争に敗れたのか、滅んでしまいました。しかし、ネズミの仲間は北米から草食獣や肉食獣が入ってくる前にさまざまな環境に適応し、何種類もの大型のネズミが生活していました。やってきた草食獣や肉食獣の種類も他の大陸ほどは多くなかったようです。大型のネズミの仲間たちは、水辺や湿地を利用したり、大きくなりすぎずに林内で隠れて生活したりしながら捕食者から逃れ、草食獣との直接の競争を避け、さらに繁殖の速さを武器に、今まで生き残ってきたと思われます。他の大陸では、ネズミの仲間がさまざまな環境に進出して大型化する前にライバルである有蹄類が繁栄してしまったので、ネズミの仲間は特殊な環境に進出したものを除いて大きくなれなかったのです。動物たちは、他の動物たちと競争しながら、生活空間や生活環境、食べ物、休み場所など、生活様式が重ならないように生活しています。これを、生態的地位(ニッチ)をめぐる競争と排除と言います。ビジネスの世界でも、商売上のやり方で隙間を狙うことを、「ニッチを取る」とか「ニッチャー」とか、言われることがありますが同じようなことです。他の企業と全く同じことをやっていると、競争が激化し、やがて負けた方が滅びるのです。誰もやっていないことをやれると、「ニッチを取って」生き残れるのです。 さて、このカピバラを食肉として利用している地域があります。南米のベネズエラなど一部地域では、このカピバラの肉を食べ、食肉用に飼育しているそうです。脂肪が少なく赤身で、食べやすいそうです。たしかに、食肉加工にする際の歩留まりはよさそうです。私は、40年ほど前にカピバラ肉が日本の給食に利用されているという新聞記事を読んだ記憶があります。しかし、少し調べたのですが、そのような記事は見つかりません。私の記憶違いなのかもしれません。 人馴れしやすく、飼育しやすいカピバラは多くの動物園で飼育されています。どこかの動物園でじっくり観察してみてください。   南 正人:理学博士。麻布大学特命教授。軽井沢で15年間自然ガイド業を行った後、麻布大学で13年間教鞭をとる。宮城県の離島・金華山でシカの研究を35年間続けている。 「森から海へ」評議員、NPO法人生物多様性研究所あーすわーむ代表理事。

[動物博士の生きものがたり]  南米では食用にされる世界一大きなネズミ:カピバラ

今回は、カピバラという動物を紹介します。 カピバラは、最近ではキャラクター化されてグッズの販売もされるなど、ちょっとした人気者になっています。「カピパラ」とか「カビバラ」とも言われますが、英語ではCapybaraなので、カピバラが正しい名前です。南米に住んでいるのですが、南米先住民の言葉で「草を食べる者」を意味する語が、スペイン語や英語に取り入れられたとされています。   さて、このカピバラは、現在生きているネズミの仲間で最大の動物です。雌雄とも最大で体長130cm、体重60kgにも達します。写真は動物園で撮影したものですが、横に少し映っているベンチと比べると、その大きさのイメージが湧くかと思います。前足の指は4本、後足の指は3本です。   カピバラは、水辺で生活しています。水辺の柔らかい植物を好み、外敵が来ると水の中に逃げ込みます。足指には小さな水掻きがついています。さらに、目と耳と鼻が頭の上部についているので、頭の大部分を水に沈めて、目と耳と鼻を出して水中に隠れて、周りの様子を伺いながら呼吸をすることができます。食べ物も危険回避も、水辺に依存しているのです。     南米には、このカピバラをはじめとして、体長が60cmを超える大型のネズミの仲間が何種類もいます。他の大陸にも大型のネズミの仲間はいます。例えば、北米のビーバー、アフリカのヤマアラシなどです。しかし、南米ほど多くの種類の大型のネズミはいませんし、カピバラほど大きなネズミの仲間はいません。さらに、南米では体重が数百キログラムから、最大で1トン近くに達したと推定される巨大なネズミの化石も見つかっています。南米は大型のネズミが繁栄している大陸なのです。 ではなぜ南米にこのような大型のネズミたちがいるのでしょうか。南米大陸は、ある時代まで北米大陸やアフリカから独立した大きな「島」だったのです。その時代には、南米で独自に進化した有蹄類がいましたが、のちに北米から入ってきた有蹄類ほどの競争力は持っていなかったと考えられています。さらに、現代のネコ科やイヌ科のような、高度に進化した肉食獣はほとんどいませんでした。ネズミは、その頃にアフリカから、海を渡ってきたと考えられています。新天地の南米に入ったネズミは、さまざまな方向に進化しました。そして、ネズミの一部が大きくなる進化を遂げたのです。「大型で大量の植物を食べる」という生活様式をとるライバルの動物が少なかったので、ネズミの仲間の何種類かがそのような生活様式を獲得したというわけです。 ところが、その後、南米大陸は北米大陸と地続きになりました。そうすると、北米大陸から、進化したタイプの有蹄類などの草食動物が南米大陸に入ってきました。ウマの仲間やシカの仲間などです。そして、それを追って、進化したタイプの肉食獣もやってきました。このような動物がやってくると、南米の有蹄類も肉食獣も競争に負けて滅びて行きました。 大型のネズミの仲間たちも、これらの新しいライバルや捕食者と対峙しなくてはなりませんでした。先述の最も巨大なネズミは、同じように巨大な草食獣との競争に敗れたのか、滅んでしまいました。しかし、ネズミの仲間は北米から草食獣や肉食獣が入ってくる前にさまざまな環境に適応し、何種類もの大型のネズミが生活していました。やってきた草食獣や肉食獣の種類も他の大陸ほどは多くなかったようです。大型のネズミの仲間たちは、水辺や湿地を利用したり、大きくなりすぎずに林内で隠れて生活したりしながら捕食者から逃れ、草食獣との直接の競争を避け、さらに繁殖の速さを武器に、今まで生き残ってきたと思われます。他の大陸では、ネズミの仲間がさまざまな環境に進出して大型化する前にライバルである有蹄類が繁栄してしまったので、ネズミの仲間は特殊な環境に進出したものを除いて大きくなれなかったのです。動物たちは、他の動物たちと競争しながら、生活空間や生活環境、食べ物、休み場所など、生活様式が重ならないように生活しています。これを、生態的地位(ニッチ)をめぐる競争と排除と言います。ビジネスの世界でも、商売上のやり方で隙間を狙うことを、「ニッチを取る」とか「ニッチャー」とか、言われることがありますが同じようなことです。他の企業と全く同じことをやっていると、競争が激化し、やがて負けた方が滅びるのです。誰もやっていないことをやれると、「ニッチを取って」生き残れるのです。 さて、このカピバラを食肉として利用している地域があります。南米のベネズエラなど一部地域では、このカピバラの肉を食べ、食肉用に飼育しているそうです。脂肪が少なく赤身で、食べやすいそうです。たしかに、食肉加工にする際の歩留まりはよさそうです。私は、40年ほど前にカピバラ肉が日本の給食に利用されているという新聞記事を読んだ記憶があります。しかし、少し調べたのですが、そのような記事は見つかりません。私の記憶違いなのかもしれません。 人馴れしやすく、飼育しやすいカピバラは多くの動物園で飼育されています。どこかの動物園でじっくり観察してみてください。   南 正人:理学博士。麻布大学特命教授。軽井沢で15年間自然ガイド業を行った後、麻布大学で13年間教鞭をとる。宮城県の離島・金華山でシカの研究を35年間続けている。 「森から海へ」評議員、NPO法人生物多様性研究所あーすわーむ代表理事。

[動物博士の生きものがたり]  小鳥たちの混群   

[動物博士の生きものがたり] 小鳥たちの混群   

冬に公園や里山に行くと、いろいろな種類の小鳥が群れになって行動していることがあります。これは「混群」(こんぐん)と言われます。おもにシジュウカラの仲間やエナガやメジロなどが混群を作っていますが、キツツキの仲間が加わっていることもあります。 シジュウカラは、初夏に子育てをします。その時は、なわばりを作って同種の他の鳥を排除します。子育てには大量のイモムシが必要ですが、隣のペアにイモムシを取られると、自分の子供に充分な食物をあげられなくなります。食物を確保するために、自分の領域を防衛するのです。ところが、雛が巣立ってしまうとなわばりはなくなります。それどころか、巣立った幼鳥を含むいくつかの家族が一緒に群れを作って行動するようになります。集団でいると、タカなど外敵の発見が早くなり、襲われても自分や家族が死ぬ確率は下がります。食物不足はみんなで移動することで解決できます。そして、秋から冬になると、他の種類の鳥たちとも一緒に群れを作るようになります。       冬は、小鳥たちにとって、とても厳しい環境です。小鳥たちの食物となる虫がいなくなります。一年以内に一生を終える虫は秋までに繁殖・産卵を終えて成体は姿を消しています。年を越して生きる虫の多くは冬眠のために木の皮の裏などに入って隠れて過ごしています。虫の数も減り、残っている虫もじっと隠れていて見つけるのが難しくなります。草の実や木の実も落ち葉や雪に隠れて探すのも大変です。しかも、冬は日照時間が短く、食料を探すことができる時間は短くなります。さらに、体が小さく熱が逃げやすい小さな動物たちにとって、外気温の低い冬は体から熱が逃げやすいので、夏以上に熱の生産をしなくてはなりません。熱の生産のためにはエネルギーを効率的に使う必要があります。無駄な動きをすると、エネルギーを消耗し熱の生産ができなくなります。一方で、多くの木は葉を落としてしまい、小鳥たちの隠れ場所が減って、タカなどの外敵に見つかりやすくなります。寒さに耐えるだけでなく、少ない食物を効率的に探し、外敵から見つかりやすい環境の中で生き延びなくてはならないのです。 冬には、シジュウカラや一回り小さなヒガラやコガラ、ちょっとがっちりしたヤマガラ、小型のキツツキであるコゲラ、小さく嘴の細いメジロなどが、一緒に行動しているのが見られます。他の種類と一緒になるといろいろな利点がでてきます。群れでいると、外敵からは見つかりやすいのですが、小鳥の側も外敵を見つけやすくなります。さらに、群れの中に違う種類の鳥がいると、同じ木にいても好んで使う空間が異なるので、さまざまな場所から外敵を見張れるのです。食物が少ないので、群れでいると競争が激しくなって、食物にありつけなくなることが起こります。しかし、混群では、構成している小鳥の種類が異なるので、競争が緩和されます。嘴の大きさが異なるので、求める食料の大きさも少し異なります。食物の探し方も取り方も少しずつ異なります。体重の軽いヒガラやエナガは、枝先まで行って食べたり、小枝にぶら下がって下側から食料を探したりします。ヤマガラやシジュウカラは幹の近くや太い枝をおもに利用します。キツツキであるコゲラは、幹や枝で専門的に探します。また、他の種類の小鳥が見つけた食料を自分が食べることもできますし、同じような場所を探すこともできます。シジュウカラは他の鳥が見つけた食料を奪うことが観察されています。 このように混群は、食料獲得については、競争を避け、あるいは、他の鳥を利用し、外敵に対しては群れの効果を発揮することができます。生存に最も厳しい冬を越すとても良い方法なのです。種類によって体格に差があるので、順位関係が生じ、弱い種類の鳥は食料を奪われたり、ストレスが生じたりしますが、それでも混群でいることのメリットが優っているのでしょう。 冬の公園で小鳥の群れを見かけたら、どんな鳥が群れにいるか、ぜひ観察してみてください。 (写真は、巣箱の中の雛にイモムシを持ってきたシジュウカラ)  <一般社団法人倫理研究所「職場の教養」誌に「野生の教養」というタイトルで掲載された文章を加筆・修正し、写真をつけました。>   南 正人:理学博士。麻布大学特命教授。軽井沢で15年間自然ガイド業を行った後、麻布大学で13年間教鞭をとる。宮城県の離島・金華山でシカの研究を35年間続けている。 「森から海へ」評議員、NPO法人生物多様性研究所あーすわーむ代表理事。

[動物博士の生きものがたり] 小鳥たちの混群   

冬に公園や里山に行くと、いろいろな種類の小鳥が群れになって行動していることがあります。これは「混群」(こんぐん)と言われます。おもにシジュウカラの仲間やエナガやメジロなどが混群を作っていますが、キツツキの仲間が加わっていることもあります。 シジュウカラは、初夏に子育てをします。その時は、なわばりを作って同種の他の鳥を排除します。子育てには大量のイモムシが必要ですが、隣のペアにイモムシを取られると、自分の子供に充分な食物をあげられなくなります。食物を確保するために、自分の領域を防衛するのです。ところが、雛が巣立ってしまうとなわばりはなくなります。それどころか、巣立った幼鳥を含むいくつかの家族が一緒に群れを作って行動するようになります。集団でいると、タカなど外敵の発見が早くなり、襲われても自分や家族が死ぬ確率は下がります。食物不足はみんなで移動することで解決できます。そして、秋から冬になると、他の種類の鳥たちとも一緒に群れを作るようになります。       冬は、小鳥たちにとって、とても厳しい環境です。小鳥たちの食物となる虫がいなくなります。一年以内に一生を終える虫は秋までに繁殖・産卵を終えて成体は姿を消しています。年を越して生きる虫の多くは冬眠のために木の皮の裏などに入って隠れて過ごしています。虫の数も減り、残っている虫もじっと隠れていて見つけるのが難しくなります。草の実や木の実も落ち葉や雪に隠れて探すのも大変です。しかも、冬は日照時間が短く、食料を探すことができる時間は短くなります。さらに、体が小さく熱が逃げやすい小さな動物たちにとって、外気温の低い冬は体から熱が逃げやすいので、夏以上に熱の生産をしなくてはなりません。熱の生産のためにはエネルギーを効率的に使う必要があります。無駄な動きをすると、エネルギーを消耗し熱の生産ができなくなります。一方で、多くの木は葉を落としてしまい、小鳥たちの隠れ場所が減って、タカなどの外敵に見つかりやすくなります。寒さに耐えるだけでなく、少ない食物を効率的に探し、外敵から見つかりやすい環境の中で生き延びなくてはならないのです。 冬には、シジュウカラや一回り小さなヒガラやコガラ、ちょっとがっちりしたヤマガラ、小型のキツツキであるコゲラ、小さく嘴の細いメジロなどが、一緒に行動しているのが見られます。他の種類と一緒になるといろいろな利点がでてきます。群れでいると、外敵からは見つかりやすいのですが、小鳥の側も外敵を見つけやすくなります。さらに、群れの中に違う種類の鳥がいると、同じ木にいても好んで使う空間が異なるので、さまざまな場所から外敵を見張れるのです。食物が少ないので、群れでいると競争が激しくなって、食物にありつけなくなることが起こります。しかし、混群では、構成している小鳥の種類が異なるので、競争が緩和されます。嘴の大きさが異なるので、求める食料の大きさも少し異なります。食物の探し方も取り方も少しずつ異なります。体重の軽いヒガラやエナガは、枝先まで行って食べたり、小枝にぶら下がって下側から食料を探したりします。ヤマガラやシジュウカラは幹の近くや太い枝をおもに利用します。キツツキであるコゲラは、幹や枝で専門的に探します。また、他の種類の小鳥が見つけた食料を自分が食べることもできますし、同じような場所を探すこともできます。シジュウカラは他の鳥が見つけた食料を奪うことが観察されています。 このように混群は、食料獲得については、競争を避け、あるいは、他の鳥を利用し、外敵に対しては群れの効果を発揮することができます。生存に最も厳しい冬を越すとても良い方法なのです。種類によって体格に差があるので、順位関係が生じ、弱い種類の鳥は食料を奪われたり、ストレスが生じたりしますが、それでも混群でいることのメリットが優っているのでしょう。 冬の公園で小鳥の群れを見かけたら、どんな鳥が群れにいるか、ぜひ観察してみてください。 (写真は、巣箱の中の雛にイモムシを持ってきたシジュウカラ)  <一般社団法人倫理研究所「職場の教養」誌に「野生の教養」というタイトルで掲載された文章を加筆・修正し、写真をつけました。>   南 正人:理学博士。麻布大学特命教授。軽井沢で15年間自然ガイド業を行った後、麻布大学で13年間教鞭をとる。宮城県の離島・金華山でシカの研究を35年間続けている。 「森から海へ」評議員、NPO法人生物多様性研究所あーすわーむ代表理事。

[動物博士の生きものがたり] 動物と植物の闘い③

[動物博士の生きものがたり] 動物と植物の闘い③

哺乳類の一部は、食料として植物を利用しています。その典型はウシやシカなどの草食獣です。彼らは、完全に植物に依存して生きています。しかし、自分の力では植物の葉にあるセルロースを分解できません。どうするかというと、胃の中で飼っている細菌などの微生物でセルロースを分解します。口で噛み砕いた植物を胃に送り、それらの微生物と混ぜ合わせます。また、いったん胃に入れた植物を吐き戻して、口の中でさらに細かくして微生物と混ぜ合わせます。こうして、セルロースを微生物に分解してもらうわけです。草食獣は分解してもらったものを吸収して栄養とするだけでなく、そうやって増えた微生物も食べてしまいます。微生物は貴重な動物タンパクです。つまり、草食獣は胃の中で牧畜をしているのです。      しかし、植物も一方的に食べられているわけではありません。イネ科植物の葉の中にはケイ酸というガラスのような硬い物質が含まれていて、噛めば噛むほど、草食獣の歯は削られていきます。草食獣は、歯が最後まで削られてしまったら、植物を細かくすることができず、栄養を取れなくなって死んでしまいます。つまり、イネ科植物は食べられながらも反撃しているわけです。 私たち人間も、植物を利用しています。ワインに含まれて心地よい苦みを感じさせるタンニンや、お茶に含まれるカテキンは、植物が自分を攻撃する細菌や動物から身を守るために作り出した物質です。人間はこうした物質を拝借して、細菌などから身を守っているのです。また、私たちが使っている薬の中にも、植物や微生物などの天然資源を利用したものがあります。ペニシリンやストレプトマイシンなどの抗生物質は、カビや細菌が他の菌の増殖を抑えるために作った物質です。私たちはいわば、生物間の競争や闘いのために作られた物質を利用しているわけです。そして、こうした物質は、生態系の中にまだまだあるはずです。生態系を守る理由の一つは、未知の有用な物質を守ることにもあるのです。 <一般社団法人倫理研究所「職場の教養」誌に「野生の教養」というタイトルで掲載された文章を加筆・修正し、写真をつけました。> 南 正人:理学博士。麻布大学特命教授。軽井沢で15年間自然ガイド業を行った後、麻布大学で13年間教鞭を取った。宮城県の離島・金華山でシカの研究を35年間続けている。「森から海へ」評議員、NPO法人あーすわーむ代表理事。

[動物博士の生きものがたり] 動物と植物の闘い③

哺乳類の一部は、食料として植物を利用しています。その典型はウシやシカなどの草食獣です。彼らは、完全に植物に依存して生きています。しかし、自分の力では植物の葉にあるセルロースを分解できません。どうするかというと、胃の中で飼っている細菌などの微生物でセルロースを分解します。口で噛み砕いた植物を胃に送り、それらの微生物と混ぜ合わせます。また、いったん胃に入れた植物を吐き戻して、口の中でさらに細かくして微生物と混ぜ合わせます。こうして、セルロースを微生物に分解してもらうわけです。草食獣は分解してもらったものを吸収して栄養とするだけでなく、そうやって増えた微生物も食べてしまいます。微生物は貴重な動物タンパクです。つまり、草食獣は胃の中で牧畜をしているのです。      しかし、植物も一方的に食べられているわけではありません。イネ科植物の葉の中にはケイ酸というガラスのような硬い物質が含まれていて、噛めば噛むほど、草食獣の歯は削られていきます。草食獣は、歯が最後まで削られてしまったら、植物を細かくすることができず、栄養を取れなくなって死んでしまいます。つまり、イネ科植物は食べられながらも反撃しているわけです。 私たち人間も、植物を利用しています。ワインに含まれて心地よい苦みを感じさせるタンニンや、お茶に含まれるカテキンは、植物が自分を攻撃する細菌や動物から身を守るために作り出した物質です。人間はこうした物質を拝借して、細菌などから身を守っているのです。また、私たちが使っている薬の中にも、植物や微生物などの天然資源を利用したものがあります。ペニシリンやストレプトマイシンなどの抗生物質は、カビや細菌が他の菌の増殖を抑えるために作った物質です。私たちはいわば、生物間の競争や闘いのために作られた物質を利用しているわけです。そして、こうした物質は、生態系の中にまだまだあるはずです。生態系を守る理由の一つは、未知の有用な物質を守ることにもあるのです。 <一般社団法人倫理研究所「職場の教養」誌に「野生の教養」というタイトルで掲載された文章を加筆・修正し、写真をつけました。> 南 正人:理学博士。麻布大学特命教授。軽井沢で15年間自然ガイド業を行った後、麻布大学で13年間教鞭を取った。宮城県の離島・金華山でシカの研究を35年間続けている。「森から海へ」評議員、NPO法人あーすわーむ代表理事。

ルビーとのお散歩コース

ルビーとのお散歩コース

2024年元旦の能登地震がルビーとの散歩中に起きた。30年近く3代の愛犬と歩いて来た散歩コースの途中に目の前でアスファルトが弾け出した、ルビーと抱き合って,震えながら見ていました。そこから家まで残っていた1km程の道は障害物競走を思い出すような体験でした。地震後マトモに散歩できるようになるまでは半月以上かかりました。 1月中旬から避難させて頂いた能登町の友人の離れは九十九湾のすぐ近くでしたのでその頃からはお散歩コースが森から海へ変わりました。精神状態は先のことで不安で一杯でしたが毎朝の散歩に海辺の風景が見れて新鮮でした。能登町に避難しながらほぼ毎日珠洲の家に戻って、時々元の散歩コースを歩いて、地震に会った所に来るとその時の恐怖感を思い出しました。ルビーは今でもそこを通ると早足に変わって、さっさと過ぎて行こうとするからきっと同じように思い出しているでしょう。     一年を通して、それぞれの季節に散歩の楽しみがあります。春には山菜、蕗のとうから始まる。秋にはキノコ、数年前から散歩中に見つけたハタケシメジとタマゴタケが秋の食卓の定番となりました。毎日同じコースを歩いていると自然界のイロハがわかって来て、楽しみが増えて行く一方です。しかし、昨年の地震の影響で私にとってとても残念なことがありました。地元を離れて行く人が増えたと共に道端に除草剤を撒く量も増えました。30年近く愛犬と歩いて来た道路沿いに人体に(もちろん犬体にも!)確実に害のあるラウンドアップを膨大に撒かれるようになりました。ルビーの前に飼っていた愛犬が農薬摂取で亡くなったこともあって、仕方がなく、今年の6月から散歩コースを変更することにしました。新しいコースにはかなり長い急な登り坂があって、最初はふうふう言いながら登って行きました。 夏の暑い時にはルビーが特に嫌がって、家を出ると前のコースに向かって行こうとしましたが今では喜んで毒のない道について来てくれるようになりました。新しい散歩コースには毎日新しい発見があります。土砂崩れの工事が数カ所で行われていましたが最近工事が終わり、それぞれの集落へ行く道が開通し今まで行けなかった南山方面にも行けるようにな理ました。猪の親子に出会って、ちょっとビビったこともあったがルビーが一丁前に追いかけてくれました。食べられるキノコを見つけるにはまだ時間がかかりそうですがこれからの紅葉が楽しみです。  

ルビーとのお散歩コース

2024年元旦の能登地震がルビーとの散歩中に起きた。30年近く3代の愛犬と歩いて来た散歩コースの途中に目の前でアスファルトが弾け出した、ルビーと抱き合って,震えながら見ていました。そこから家まで残っていた1km程の道は障害物競走を思い出すような体験でした。地震後マトモに散歩できるようになるまでは半月以上かかりました。 1月中旬から避難させて頂いた能登町の友人の離れは九十九湾のすぐ近くでしたのでその頃からはお散歩コースが森から海へ変わりました。精神状態は先のことで不安で一杯でしたが毎朝の散歩に海辺の風景が見れて新鮮でした。能登町に避難しながらほぼ毎日珠洲の家に戻って、時々元の散歩コースを歩いて、地震に会った所に来るとその時の恐怖感を思い出しました。ルビーは今でもそこを通ると早足に変わって、さっさと過ぎて行こうとするからきっと同じように思い出しているでしょう。     一年を通して、それぞれの季節に散歩の楽しみがあります。春には山菜、蕗のとうから始まる。秋にはキノコ、数年前から散歩中に見つけたハタケシメジとタマゴタケが秋の食卓の定番となりました。毎日同じコースを歩いていると自然界のイロハがわかって来て、楽しみが増えて行く一方です。しかし、昨年の地震の影響で私にとってとても残念なことがありました。地元を離れて行く人が増えたと共に道端に除草剤を撒く量も増えました。30年近く愛犬と歩いて来た道路沿いに人体に(もちろん犬体にも!)確実に害のあるラウンドアップを膨大に撒かれるようになりました。ルビーの前に飼っていた愛犬が農薬摂取で亡くなったこともあって、仕方がなく、今年の6月から散歩コースを変更することにしました。新しいコースにはかなり長い急な登り坂があって、最初はふうふう言いながら登って行きました。 夏の暑い時にはルビーが特に嫌がって、家を出ると前のコースに向かって行こうとしましたが今では喜んで毒のない道について来てくれるようになりました。新しい散歩コースには毎日新しい発見があります。土砂崩れの工事が数カ所で行われていましたが最近工事が終わり、それぞれの集落へ行く道が開通し今まで行けなかった南山方面にも行けるようにな理ました。猪の親子に出会って、ちょっとビビったこともあったがルビーが一丁前に追いかけてくれました。食べられるキノコを見つけるにはまだ時間がかかりそうですがこれからの紅葉が楽しみです。  

みうちゃまそこは動線上です

みうちゃまそこは動線上です

日中、陽射しは暑く感じるものの夏の殺人的な暑さからは脱したなぁと感じるこの頃。 秋の風が確実に吹きはじめているのですが、なかなかすっと気持ちよく切り替わって涼しくはなってくれません。 おりく坊は連日へそ天で床に転がっています。   さて一方のメンヘラのみうちゃま、1年以上たった今でもおりく坊のようにへそ天や変な格好で寝る・・・ということはしてくれません。 男の子の方が変な格好で寝ることが多いのか、単にみうちゃまの性格なのか。 未だに昼寝にすら没入しないことが多いです。なにせ、ストレッチし始めたら寄って来るし、寝転がったら寄って来るし、場所を移動したら付いて来ます。 この前、試しにトイレのドアを開けて入ってみたら見事に付いてきました。人間で言うと何歳児くらいなのかな…このどこまでも付いてきて「ねぇねぇ」とひたすら話しかけてくるのは。 そして実は彼女は付いてくるだけにとどまらなくて「ちょいちょい・・・」と日々私たちにツッコまれています。   なぜ動線上にくるのか   ストーカーだけならまだ良いんですけど、彼女はなぜか私たちの進行方向へ必ず歩いてゆきます。先導しているようにトコトコと。 リビングからキッチン、玄関からリビング。 先導しているという意識なら良いのですが、彼女はむしろ逆で追いかけられていると認識して、急ぎ足で逃げるという全く意図していないシチュエーションが多発。 にゃーにゃー言いながら被害者意識満載で逃げるため、旦那さまに毎度「追いかけているわけじゃないのよ・・・」と呆れられている始末です。 こっちとしてもさっさと抜かしたいけど、絶妙にさっと抜かすほどでもない速さと距離感なのでこっちが後ろでちょっともたつく。そんなことありませんか、駅の構内や路上で。前を歩く人との間隔の中で。 みうちゃま本人は全くの無自覚でやっているんだからどうしようもないですけどねぇ。猫と人間では生活導線は被るわけないんですけど。   猫はシンプルだからこそ意味不明   キャッツ達を見ていると、「状況判断」「因果関係」というものから行動するってゼロなんだなとつくづく実感します。ただ行きたい方向がこっち。ただそうしたいからする。 「○○だから」という理由付けが背景にあって行動する、そんなフクザツなことはこの地球上で人間しかしていません。そして、「気を遣う」なんてことももちろんしない(笑) シンプルだからこそ、意味不明な行動になる。なんだか不思議。

みうちゃまそこは動線上です

日中、陽射しは暑く感じるものの夏の殺人的な暑さからは脱したなぁと感じるこの頃。 秋の風が確実に吹きはじめているのですが、なかなかすっと気持ちよく切り替わって涼しくはなってくれません。 おりく坊は連日へそ天で床に転がっています。   さて一方のメンヘラのみうちゃま、1年以上たった今でもおりく坊のようにへそ天や変な格好で寝る・・・ということはしてくれません。 男の子の方が変な格好で寝ることが多いのか、単にみうちゃまの性格なのか。 未だに昼寝にすら没入しないことが多いです。なにせ、ストレッチし始めたら寄って来るし、寝転がったら寄って来るし、場所を移動したら付いて来ます。 この前、試しにトイレのドアを開けて入ってみたら見事に付いてきました。人間で言うと何歳児くらいなのかな…このどこまでも付いてきて「ねぇねぇ」とひたすら話しかけてくるのは。 そして実は彼女は付いてくるだけにとどまらなくて「ちょいちょい・・・」と日々私たちにツッコまれています。   なぜ動線上にくるのか   ストーカーだけならまだ良いんですけど、彼女はなぜか私たちの進行方向へ必ず歩いてゆきます。先導しているようにトコトコと。 リビングからキッチン、玄関からリビング。 先導しているという意識なら良いのですが、彼女はむしろ逆で追いかけられていると認識して、急ぎ足で逃げるという全く意図していないシチュエーションが多発。 にゃーにゃー言いながら被害者意識満載で逃げるため、旦那さまに毎度「追いかけているわけじゃないのよ・・・」と呆れられている始末です。 こっちとしてもさっさと抜かしたいけど、絶妙にさっと抜かすほどでもない速さと距離感なのでこっちが後ろでちょっともたつく。そんなことありませんか、駅の構内や路上で。前を歩く人との間隔の中で。 みうちゃま本人は全くの無自覚でやっているんだからどうしようもないですけどねぇ。猫と人間では生活導線は被るわけないんですけど。   猫はシンプルだからこそ意味不明   キャッツ達を見ていると、「状況判断」「因果関係」というものから行動するってゼロなんだなとつくづく実感します。ただ行きたい方向がこっち。ただそうしたいからする。 「○○だから」という理由付けが背景にあって行動する、そんなフクザツなことはこの地球上で人間しかしていません。そして、「気を遣う」なんてことももちろんしない(笑) シンプルだからこそ、意味不明な行動になる。なんだか不思議。