[動物博士の生きものがたり] 小鳥たちの混群
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冬に公園や里山に行くと、いろいろな種類の小鳥が群れになって行動していることがあります。これは「混群」(こんぐん)と言われます。おもにシジュウカラの仲間やエナガやメジロなどが混群を作っていますが、キツツキの仲間が加わっていることもあります。 シジュウカラは、初夏に子育てをします。その時は、なわばりを作って同種の他の鳥を排除します。子育てには大量のイモムシが必要ですが、隣のペアにイモムシを取られると、自分の子供に充分な食物をあげられなくなります。食物を確保するために、自分の領域を防衛するのです。ところが、雛が巣立ってしまうとなわばりはなくなります。それどころか、巣立った幼鳥を含むいくつかの家族が一緒に群れを作って行動するようになります。集団でいると、タカなど外敵の発見が早くなり、襲われても自分や家族が死ぬ確率は下がります。食物不足はみんなで移動することで解決できます。そして、秋から冬になると、他の種類の鳥たちとも一緒に群れを作るようになります。
冬は、小鳥たちにとって、とても厳しい環境です。小鳥たちの食物となる虫がいなくなります。一年以内に一生を終える虫は秋までに繁殖・産卵を終えて成体は姿を消しています。年を越して生きる虫の多くは冬眠のために木の皮の裏などに入って隠れて過ごしています。虫の数も減り、残っている虫もじっと隠れていて見つけるのが難しくなります。草の実や木の実も落ち葉や雪に隠れて探すのも大変です。しかも、冬は日照時間が短く、食料を探すことができる時間は短くなります。さらに、体が小さく熱が逃げやすい小さな動物たちにとって、外気温の低い冬は体から熱が逃げやすいので、夏以上に熱の生産をしなくてはなりません。熱の生産のためにはエネルギーを効率的に使う必要があります。無駄な動きをすると、エネルギーを消耗し熱の生産ができなくなります。一方で、多くの木は葉を落としてしまい、小鳥たちの隠れ場所が減って、タカなどの外敵に見つかりやすくなります。寒さに耐えるだけでなく、少ない食物を効率的に探し、外敵から見つかりやすい環境の中で生き延びなくてはならないのです。
冬には、シジュウカラや一回り小さなヒガラやコガラ、ちょっとがっちりしたヤマガラ、小型のキツツキであるコゲラ、小さく嘴の細いメジロなどが、一緒に行動しているのが見られます。他の種類と一緒になるといろいろな利点がでてきます。群れでいると、外敵からは見つかりやすいのですが、小鳥の側も外敵を見つけやすくなります。さらに、群れの中に違う種類の鳥がいると、同じ木にいても好んで使う空間が異なるので、さまざまな場所から外敵を見張れるのです。食物が少ないので、群れでいると競争が激しくなって、食物にありつけなくなることが起こります。しかし、混群では、構成している小鳥の種類が異なるので、競争が緩和されます。嘴の大きさが異なるので、求める食料の大きさも少し異なります。食物の探し方も取り方も少しずつ異なります。体重の軽いヒガラやエナガは、枝先まで行って食べたり、小枝にぶら下がって下側から食料を探したりします。ヤマガラやシジュウカラは幹の近くや太い枝をおもに利用します。キツツキであるコゲラは、幹や枝で専門的に探します。また、他の種類の小鳥が見つけた食料を自分が食べることもできますし、同じような場所を探すこともできます。シジュウカラは他の鳥が見つけた食料を奪うことが観察されています。
このように混群は、食料獲得については、競争を避け、あるいは、他の鳥を利用し、外敵に対しては群れの効果を発揮することができます。生存に最も厳しい冬を越すとても良い方法なのです。種類によって体格に差があるので、順位関係が生じ、弱い種類の鳥は食料を奪われたり、ストレスが生じたりしますが、それでも混群でいることのメリットが優っているのでしょう。
冬の公園で小鳥の群れを見かけたら、どんな鳥が群れにいるか、ぜひ観察してみてください。 (写真は、巣箱の中の雛にイモムシを持ってきたシジュウカラ)
<一般社団法人倫理研究所「職場の教養」誌に「野生の教養」というタイトルで掲載された文章を加筆・修正し、写真をつけました。>
南 正人:理学博士。麻布大学特命教授。軽井沢で15年間自然ガイド業を行った後、麻布大学で13年間教鞭をとる。宮城県の離島・金華山でシカの研究を35年間続けている。 「森から海へ」評議員、NPO法人生物多様性研究所あーすわーむ代表理事。