シカの食べ物 – Dr.南の生きものがたり

カモシカはなわばりをもっていて、1年中そのなわばりを守って生きています。カモシカは、自分の食料資源を守るためになわばりをもっていると考えられています。カモシカにとっては、一生をそこで過ごすので、資源を荒らされると生きて行けないのです。しかし、シカは食料資源を守るためのなわばりをもっていません。オスの一部は秋になると、メスを獲得するためになわばりをもつ場合がありますが、発情が終わるとなわばりはなくなります。シカは、生活している場所の食料が減ってしまうと、食料のある場所まで遠征したり、移動してしまったりします。宮城県の金華山という小さな島にはシカが600頭位棲んでいるのですが、食料が厳しくなっても海を渡って島をでるシカはほとんどいません。シカはこの島の中で生きてゆかなくてはなりません。シカがよく食べる植物は食べ尽くされてしまいます。そうすると、シカは別の植物を食べなくてはなりません。今度は、その植物を食べ尽くすことになります。生長の速い植物は回復することもありますが、そうでない植物は島から消えてゆきます。それが続くと、シカはこれまでは食べなかった苦い植物や棘のある植物も食べざるを得なくなります。背に腹は代えられないということです。15年位前にはシカに食べられずに島にたくさん生えていたハンゴンソウという植物は、今ではほとんど見られなくなりました。シカは自ら食環境を変化させながら生きているのです。