ペットフードもオーガニック?
「オーガニック食品」という言葉は、近年よく耳にする言葉の一つである。実際に自身の健康や食の安全を確保するため、または環境に配慮して作られた食材を選びたいという考え方から、食べ物を購入する際にオーガニックであることを基準に選択した経験がある方も増えてきたように思う。では、私たちと一緒に暮らしているわんちゃんやねこちゃんの食事を選ぶ際にも、健康や安全のためにオーガニックなものを選択する必要があるのだろうか。
確かに、オーガニック食品として販売されているものは農薬や化学肥料の使用に関して配慮がされ、さらに遺伝子組み換えでないことなどから、日々の食事をより安全にするための一つの目安になると考えられる。そのため、この目安を元に食事を選択することで私たち人間だけではなく、生活を共にする犬や猫をはじめとした動物たちの健康にとってもメリットがあることは想像できる。しかし、2020年現在、ペットフードとして販売される商品に関して、オーガニックであるかそうでないかを客観的に証明することはできない。
そもそも、日本でオーガニック食品と名乗るためには農林水産省が認める有機JASという厳格な基準をクリアする必要がある。この基準に明記されているのが、前述した農薬や化学肥料、遺伝子組み換えに関する内容である。ただし、これは人の食品が認定の対象であって、ペットフードは認定対象外である。そのため、有機JASの基準をクリアしたドッグフードやキャットフード、あるいは他の動物種のためのフードが存在したとしても、農林水産省が認めているということにはなり得ない。つまり、現段階では「自称オーガニックフード」にしかなることができないのである。これは逆に言えば、有機JASの基準をクリアしていなくても、製造者やメーカー側が「これはオーガニックフードだ!」と思えば、そういった内容を盛り込んだ商品を販売することも不可能ではないということである。また、ペットフードの販売や製造については、農林水産省が司るペットフード安全法やペットフード公正取引協議会が関わっているが、不当表示の禁止や客観的な根拠のない表示を規制するのみで、「オーガニック」という文言の使用に関するルールについて記載はない。余談にはなるが、プレミアムフードも同様で、製造者やメーカーの判断でプレミアムを名乗っている場合もある。
以上より、ペットフードとして販売されているものの中から、人の食品と同じレベルのオーガニックフードを探し出すことは困難であることが分かる。そのため、人の食材として売られているオーガニック食品からおうちのわんちゃん、ねこちゃんのために手作りをするのでなければ、健康と安全のためにオーガニックを一番の基準にする必要はない。最も重要視すべきことは、人であろうと動物であろうと、毎日の食事を通して色々な食材を食べ、様々な栄養素を摂取することである。