【夢旅 058】浅草の豆柴

 

ちょっとだけよ、アンタも好きね~

たまには東京猫(東京の端っこの多摩地区の猫だけどね)として、東京の名所のことも知っておかねば、ということで「浅草」に行ってきた。東京の名所探訪といえば聞こえはいいけど、つまることろ、浅草で働いているという「豆柴(まめしば)」に会いに行ったんだ。豆柴というのは、いわゆる ”小さい柴犬” のこと。

柴犬の「柴」という字は、山野に生える背の低い雑草のことで、「小さい」っていう意味もあるんだって。柴犬は、中・大型犬がほとんどの日本犬の中で唯一小型犬に分類される犬種なんだ。そんなただでさえ “小さい” 柴犬に “豆” がつくんだから、さぞかし「ちっちゃ!」なんだろうなぁ、と、ボクは興味津々で浅草の旅を楽しみにしてたんだよね。

ちなみに、日本犬とは、日本に古くからいる在来犬で、北海道犬・秋田犬・柴犬・甲斐犬・紀州犬・四国犬の6犬種が「日本犬」に指定されていて、6犬種ぜんぶが国の天然記念物に指定されてるんだよ。ほかにも川上犬や琉球犬のように、特定の地域に古くからいる犬もいるんだけど、それらは「地犬(じいぬ)」って呼ばれてるんだ。

ところで、浅草といえばやっぱり行っておきたいのが「雷門」。もちろん、ボクもホーリーもまっさきに行ったよ。で、目がまん丸になっちゃった。だってさ、平日の昼間だってのに人で溢れてるんだもの。しかも、英語、フランス語、中国語、韓国語、いろんな言葉が聞こえてきて(猫語は聞こえなかった)、とにかくもう、外国にいるみたい。浅草はボクの “ホーム” ではないけれど、雷門の周辺はなんとなく “アウェイ” な感じ。着物を着た女子がちらほらいたりして、日本だなぁ感もあるんだけど、よくよく話し声を聞いてみると、ほぼ外国人なんだよね。驚いたよ。

で、もひとつ驚いたのが人力車の俥夫のお兄さんの足。すごいんだ、筋肉が。モリモリ隆々でどこまでも走っていけそうで強さとしなやかさを併せ持ってるみたいな大腿四頭筋とハムストリングス。惚れ惚れと見とれちゃった。あの足が見られただけでも浅草に来た甲斐があったってもんだ。筋肉男子のお兄さん、アザーーーーッす!(ホーリーのやつ、恥ずかしくって俥夫のお兄さんの筋肉の写真撮れなかったんだって。おっさんがなに恥ずかしがってんだよぉ~。人力車の後ろから撮ったって見えねーんだよぉ~、筋肉が)。

ということで、そろそろ本題に入ろう。そう、いよいよ豆柴に会うのだ。雷門からほど近いアーケードの一角に豆柴はいた(”まめしばはいた” と打ったら “豆柴吐いた” と変換。まぁ、これはある。で、”ねこはいた” と打ったら “猫は板” だって。なんのこっちゃ)。

まずは店頭で入場チケットを購入。入場時間を指定されて待つこと20分。システムとしては、30分1,000円でドリンク飲み放題触りたい放題(抱っこや引き寄せNGなどのルールはある)。
さぁ、いよいよ店内へ(猫が入れるのか問題についてはこの際置いておく)。中は思ったよりもこじんまりとしていて照明の明るさも程よい感じ。畳ふうのものが敷き詰められた床にはいくつかのちゃぶ台が置かれ、お客たちが思い思いの場所でまったりとしている。
豆柴はというと、いるいる。赤毛、黒毛、白毛の豆柴が数頭、お客の膝の上で寝ている子もいれば、床で寝ている子もいる。寝てる子ばかりかというとそうでもなく、お客とおもちゃで遊んでいる子や、お客たちの間をウロウロと歩き回っているだけの子もいる。うんうん、小さいぞ。だけど、ちゃんと柴犬だぞ。巻き尾にぷりんとしたお尻がめちゃくちゃカワイイぞ。お尻撫でて頭わしゃわしゃするぞー。と、ホーリーのテンションは爆上がりだ。彼は床に座って目の前を通る子に片っ端から「おしょしょおしょしょ、こっちおいでぇ~。」なんて声をかけまくっている。
ところが、塩対応なんだよね、どの子も。横目で一瞥をくれるだけで歩を止めることもなく通り過ぎる豆柴ちゃん。去りゆく子のお尻を眺め、隣のお客の膝の上で眠る子を眺め、お客の持つおもちゃに楽しそうにかぶりつく子を眺め、そして、うつむくホーリー。その目には嫉妬と羨望の炎がユラユラと揺れていた。ボクはそんな彼を見ているのが楽しくってしょうがない。好きな女の子に振られっぱなしのホーリーを見ているようでマジ楽しい。彼の不幸はボクの悦楽なのだった。

そのうち見るに見かねた店員さんが1頭の女の子をボクたちのところに連れてきた。その子は、「ふくちゃん」という名前のちょっとスレンダーな美犬さん。店員さんが一緒なので、さっきまでの塩対応とは打って変わって “触って触って~” と全力仲良しモードのふくちゃん。ゴロンと仰向けになってお腹まで触らせてくれちゃってる。
恐ろしいほどの変わりようにビビってるボクの横では、ホーリーが例の「おしょしょ」全開でデレデレしている。よかったねー、わしゃわしゃできて。でも、その子、店員さんが離れたら、1ミリの躊躇もなく立ち上がって去って行った。やっぱ塩だ。わしゃわしゃしていた手をそのまま宙に浮かせて固まるホーリー。あーあ、行っちゃったねー。ちょっとだけよの愛嬌だったね。
そう、豆柴といえど柴は柴。一見さんに愛嬌を振りまくような性格ではないのだ。塩対応が普通と思うべし。でも、何度も会えば神対応に変わるかもしれないよ。
どうするホーリー。“推し” のところに通いつめて仲良くしてもらうってなぁどうだい?。