【夢旅 057】ポールからの贈り物
次はジョン・レノンで
去年の暮れにホーリーの元にひとつの贈り物が届いたんだ。あいにく家には誰もいなかったので、贈り物を受け取ることができず、不在票がポストに入っていた。不在票によると、届けてくれたのは郵便局の人。届いたものがなんなのか具体的には何も書かれていないので中身は不明だけれど、「簡易・記録」というところにチェックが入っているから、たぶん簡易書留なんだろうとは思う。簡易書留と言えば、クレジットカードやキャッシュカード、金券、チケットなどなど、大事なものが入っていて、必ず手渡しで受け取りにはサインが必要なもの。ホーリーにはなんの心当たりもなかったから、頭の上には「?????」マークがいっぱいついてたんだ。
そして、贈り物の差出人を見て、「?????」マークが「!!!!!」マークに変わった。だって、あなた、そりゃそうでしょうよ、差出人欄に書かれていたのは、あの世界的に有名な、レット・イット・ビーを作ったレノン=マッカートニーの「ポールマッカートニー」だったんですのよ(コーフンするとおばちゃん化してしまうボク)。
あらやだ、でもなんでホーリーごときに世界のポールから贈り物が届くのかしら。インターネットのおかげで世界中の人とつながることができるとはいえ、まさかそんなことあるわけないわよねぇ。ポールって人がめちゃくちゃ奇特なお方で、日本の東京の多摩地区の庭にアライグマが出る家に住む歩き旅が好きな下痢体質で両手の小指が曲がってる小柄なおじさんとのコンタクトを熱望していたとしたら、もしかしたら突然の贈り物もあるかもしれな……いやいやいや、ぜったいにないないないわ!。
ふぅ、ちょっと冷静にならなくちゃいけないわね。
百万億歩譲って、本当にあの “サー” の称号を持つポールからだったとしたら、差出人欄には「ポールマッカートニー」というカタカナ表記、しかもポールとマッカートニーの間に「・」もないいい加減なものではなくて、「Paul McCartney」という表記になるはずだよな(冷静になったので元の言葉使いに戻った)。ということは、Sir Paul McCartney を騙る不届き者が何かよからぬものを送りつけてきたのかもしれないと思ったので、ボクはホーリーにこう忠告したんだ。
「ホーリー、これはもしかしたら、頼みもしないのに勝手に品物を送りつけてお金を騙し取る “送りつけ詐欺” に違いないよ。早く対応しないとナケナシのお金取られちゃうよ!」。
送りつけ詐欺っていうのは以前からあって、主に「代金引換」を利用して商品を送りつけて無理やり買わせるっていう手口らしいんだけど、今回、ポールから送られてきたものは代引き商品ではなく簡易書留。想像するに、おそらく箱に入ったものではなくて、封筒のようなものに入れられた薄くて軽い何か。猫の妄想はどんどん進む。
あっ、ちょっとちょっと、あなた、あら、そうよ、ぜったいそうよ。ポールったらありもしないライブのチケットかなんかを送りつけてきてチケットに印刷されたQRコードでウェブサイトにアクセスさせてクレジット決済とかさせてお金だけじゃなくてクレジットカード情報までも盗もうってハラなんだわぜったいそうだわそうよそうよホーリーQRコードなんか読みとっちゃダメよぜったいダメよ(またコーフンしておばちゃん化する。しかも、思い込みの激しいおばちゃん)。
すると、ボクがコーフンしておばちゃん化してる間にホーリーが送りつけ詐欺の対応法をグーグル教授に相談したらしく、「ぽんずさん、なんか、ほっといても大丈夫みたいだよ。とりあえずこのまま放置しておくよ。郵便局の預かり期限が過ぎたら荷物が戻されるだろうから。」
ふーむ、なるほど、それもそうか。
放置すること数日、何事もなく日々は過ぎ、ポールからの贈り物はポールの元に戻っていった(と思われる)。
そして、それからまた数日経ったある日のこと。ホーリーがポストを開けると、またきていたのだ。ポールからの贈り物が。今度は黒ネコの不在票が入っていて、差出人は前回と同じ「ポールマッカートニー」。
うーむ、テキもなかなかしぶとい。今度は黒ネコを使ってきたか。ってことは、また放置して荷物が差し戻されたら、3度目は飛脚を使うのだろうか。輸送費払ってそこまでするんだから詐欺も色々大変なのかもぁ、なんて妙に同情してしまった。でも、これ以上付き合うのもなんだかバカらしいので、再びホーリーに忠告。
「宅配便って、受け取りを拒否することができるみたいだよ。しつこいから拒否っちゃいなよ。」
そして、ホーリーはボクの忠告を受け入れて黒ネコに連絡し、ポールからの受け取りを拒否したのだった。これにて一件落着、めでたしめでたし。
となるはずだったのだけれど、その後数日たったある夜、ホーリーのスマホに届いた一通のメールにはこう記されていた。
「兄貴~、ポールマッカートニーからの荷物を受け取って下さ~い(原文まま)」
そうなのだ。なんてこった。人騒がせなポールはまさかの身内。ホーリーの弟だったのである。ホーリーが即座に怒りの返信をしたのは言わずもがななんだけど、そのメールの最後に「ジョン・レノンだったら、もしかしたら受け取ったかもなぁ。(原文まま)」だって。なんだかなぁ~。兄弟どっちもどっちなのである。。
ちなみに、冒頭の写真の中のイタリアン・グレーハウンドの名前は「John(ジョン)」です。
皆さん、2024年もよろしくお願いしま~す!