チャチャ日記 1

犬を飼ってみようと思った。

2人の娘たちは既に海外で暮らしていて、僕は古希を迎え、妻も母もボケが激しくなり覇気がなくなってきたので、我が家に元気を振りまく存在が必要だと思ったからだ。

手に負えないいたずらをしたりバカをやったり笑いを振りまく存在がほしい。

認知症の患者が犬を飼ったことで症状が改善したという報告もある。

犬を家族に迎えて若返りを図りボケ防止をしようという作戦だ。

妻に話してみるとあっさり否定された。

「犬なんて絶対に無理よ!自分のことだけで精一杯なのに犬なんか来たら面倒見切れないでしょ!!」と言う。

しかし、妻は無類の犬好きだから犬と会えば考えが変わるのじゃないかと思い、

「飼わなくてもいい。どんな犬がいるかだけ見に行かないか!」と提案した。

数日後、僕の好きな犬種・ジャックラッセルテリアのブリーダーをネットで見つけて妻と群馬県まで出掛けた。

「見るだけ見るだけ。今日はお気軽!!」

高速を降りて田園地帯を走り、野中の一軒家のブリーダー宅にたどり着くと、50匹ほどのジャックラッセルテリアが溢れていた。。珍しい犬種だと聞いたのにあまりの数の多さに戸惑う。

販売してるのはそのうち生まれて半年ほど経過した3匹だけだと言う。

早速、その3匹とご対面した。

ジャックラッセルテリアのロングヘア―はなかなか愛嬌がある。

子犬を抱き上げた妻が「こんなに可愛くちゃ選べないわ。こっちもいいけどこっちもいい!どれにしようかなぁ??」などと叫び出した。

「はぁ????」

いきなり買う気満々じゃないか!!

そして結局、妻はその場で即決したのである。あまりの急展開に仰天した。

必要なワクチンと注射を済ませて1か月後に子犬は我が家にやって来た。

子犬の名前をチャチャと名付けた。チャカチャカ忙しく動くからチャチャである。

新しい環境に慣れなかったチャチャはしばらくの間、食欲がなかった。

既成のドッグフードを与えても食べない。犬が好きだというオヤツさえも食べない。どんなモノでも我武者羅に食べるのが犬だと思っていたのにまるで違う。

このままじゃ痩せてしまうと僕は焦った。

そこでドッグフードに鶏肉を混ぜてみたらなんとか食べた。しかし、ボロボロこぼしてお皿の中のドッグフードは残ったままだ。

そこでドッグフードに鹿肉のミンチを混ぜてみた。すると、どうだろう?

夢中になって食べ始めたのだ。

あっという間に食べきり何もなくなったお皿をしつこく舐める。あまりに舐めすぎてお皿を壁の端まで押し込んでいく。しばらくすると再び戻って、もう一度お皿を舐めている。まるで犬の食器洗い機。

鹿肉がそんなにも好きだとは思いもしなかった。天然・無添加の鹿肉の旨さが犬にもわかるんだなぁ~。

それ以来、チャチャの主食は鹿肉となった。最近ではあまりにグルメなチャチャに「たまには庶民のドッグフードも食べてくれ。」と頼んでいる毎日である

 

 

執筆者

本田 亮 ほんだ りょう
CMプランナーとして、ピッカピカの1年生など数多くのキャンペーンを企画・制作してきた。
サラリーマン転覆隊隊長として、世界中の海山川を旅し、その体験をアウトドア雑誌などで連載中。
環境マンガ家として、様々な社会問題を取り上げ楽しくわかりやすく解説している。