【夢旅 052】魅惑のノスタルジックジャーニー①

 

 

 

旅行に行くならイトウ

秋の旅は南がいいよね。北のほうは、まだ雪景色には早く、紅葉した木の葉はほぼ散ってしまい、葉の落ちた枝を抜けて吹く風がやたらと冷たくて、とにかくただただ寒い。
比べて、南方面にはまだ紅葉が残り、吹く風もほんのりと温かく、猫も犬も人も顔つきがゆるゆるとしていて柔らかい(ような気がする)。
ということで、伊豆を目指した。

以前、ホーリーに騙されて海の水を舐めて泣くほどしょっぱい目にあった伊東に行ったんだけど、伊東に行くならやっぱりハ○ヤ。憧れの宿。ボクが生まれるずっと前、かの「昭和」と呼ばれた何かとゆる〜い時代の温泉宿の象徴のようなホテルだ。海底温泉で魚を見て、そして、なんたって「三段逆スライド方式」なのだ。なにが三段で、どう逆スライドなのかはさっぱり分からないけどね。とにかく、伊東といえばハ○ヤだし4126「ヨイフロ)なのだ。

けれど、憧れは憧れのまま、手を伸ばせば届きそうなところに置いておくほうがいいものもあるようなので、ボクはハトヤ(あっ、言っちゃった…)を永遠の憧れとして胸に抱いておくことにする。

それにしても、伊豆はあったかいなぁ。いかにも温暖といった感じの明るい海が見えるし、「夏かよ!」って思うような太陽に真っ向勝負を挑むようにキッパリと花が咲いていたりするんだから。11月はじめのこの日、伊豆は想像以上に暑くて、やっぱ北にいけばよかったかなぁ、なんて思ったくらい。猫は寒いのが苦手だけど、暑さにも弱い。

今回ボクが旅をした伊東というところは、海と温泉の街で、ノスタルジックな街並みは昭和の時代にタイムスリップしたみたいだ。平成生まれのボク(現在8歳)だけど、前にこの街に住んでたことがあるんじゃないかって思っちゃうほどの懐かしさを感じるんだから不思議だなぁ。

猫のボクはお風呂が大っ嫌いなんだけど、ホーリーと一緒に行った共同浴場(伊東には10箇所の浴場があって、地元の人の憩いの場)が、これがまた、全力で昭和なんだ。番台にはおばちゃんがいて、木製のロッカーにはレトロな札状のカギ。洗い場にシャワーなどという便利な代物などなく、風呂桶はもちろん黄色に赤文字の「ケロリン」。お湯は当然のように熱い(ホーリー談)。しかし、さすが本物の温泉、浴槽のお湯は掛け流しだ。地元のおじさんたちが「アーーーッ」とか「ウーーーッ」とか唸りながら気持ちよさそうにお湯に浸かっていく。
ホーリーの第一声は「あっつーーーっ!」だった。

我が執事が地元のおじさんたちと張り合うように真っ赤な顔でお湯に浸かってる間、あるじのボクは椅子の横にハンドルがついたマッサージチェア(昭和の当時は「あんま機」って呼んでいたらしい)でウトウト。昭和から続くおじさんたちのお尻の匂いに包まれて、ボクは安らかな眠りを楽しんだ。

熱い湯に浸かってポッカポカになった執事の湯上がりの散歩に付き合って、夜の伊東の街を少し歩いた。この街は、夜になると昼以上に昭和レトロな雰囲気が漂うんだ。おしゃれな洋風のものもあるんだけれど、それが昭和感たっぷりの街並みの中にうまく溶け込んでいてぜんぜん違和感を感じないんだよね。ギラギラと明るくもなく、妖しいほどの暗さでもない、街全体を覆う程よい暗さが街の雰囲気をひとつにまとめ上げていると言えなくもないけれど、すごくいいんだよねぇ、この街の昭和感が。おしゃれなカフェの隣に小さな居酒屋やスナックがあって、カラオケの音が外にダダ漏れちゃってて、聞こえてくる歌が石川さゆりや山口百恵といった昭和の歌謡曲だったり荒井由実やチューリップなどのニューミュージックときてる。夜の伊東はノスタルジーの塊だ。そして、ほろ酔いというか、もうそれ以上飲んじゃダメよ的に酔ったおじさんたちがあちこちで笑っている。のどかで懐かしくてほんのりとあったかい街だなぁ、伊東ってところは。

そして、こんな街にはボクのような日本猫(いわゆる雑種の猫)や柴犬のような犬がよく似合うんだなぁ。居酒屋とカフェの間のちょっとした隙間から猫がひょっこり出てきたり、どこかの家の猫が窓から遠くを見ていたり、柴犬がお尻をぷりぷりさせながら散歩していたりするような光景がとてもしっくりと馴染んでるんだよね。
風呂上がりのホーリーとふたり、夜の街をそぞろ歩きながらお互いに「なんか、懐かしくてホッとするね。」などと言い、「いーい湯だな、あははーん」などと口ずさんでみた(ボクは猫語でしかも平成生まれ、そして、そもそもあの曲の中に伊東の街は出てこないんだけどねー)。

ところで、例の「三段逆スライド方式」というのは、どうやら、釣り堀で釣った魚の買い取り値段が釣った魚の数が多くなると安くなっていくというシステムらしいね。つまり、釣れば釣るほどお得になるということらしい。そして、そのシステムは令和の今でも健在だとのこと。昭和は続くよどこでも。昭和ブームの今、「旅行に行くならイトウ」かもね。