【夢旅 053】魅惑のノスタルジックジャーニー②

 

 

 

秋の伊豆高原は犬ざかり

今週もボクは伊豆だ。
伊東からさらに南に電車で20分ほど行った「伊豆高原」。ここには弥太郎じいさんという頑固で気難しくて頭突きの得意な老ヤギがいる。このじいさんは、ボクのことを初対面のときからバカにしているようなフシがある。生まれて初めて海水を舐めたら気絶するほどしょっぱかったって話をしたら「ケーーーーーッ!」、牛乳を飲むと下痢するって話したときもやっぱり「ケーーーーーッ!」。牛乳を飲めなく張ったのは搾りたての生ぬるいヤギ乳を無理やり飲まされたからだって話したら、当然のように「ケーーーーーッ!」。

そしてきょう、ボクはただ「おはよう、弥太郎さん」って挨拶しただけなのに「ケーーーーーッ!」っときた。ヤギならヤギらしく「メー」だろ。なんてこと考えてたら、心の中を見透かされたみたいで、またしても「ケーーーーーッ!」だ。完全にバカにされてる。まったく可愛げのないじいさんなんだ。でも、なぜか憎めないんだよなぁ。弥太郎さんは猫たらしなヤギなのだ。

この日、伊豆高原のとある場所に犬が集まると聞いてやってきたのだけれど、朝だからなのか、弥太郎さんが例の嘲笑で門前払いを食らわしてるせいなのかはわからないけど、まだ犬の姿は見当たらない。まぁ、時間はたっぷりあるから、弥太郎さんを横目に見ながらちょっと散策してみることに。
ニコニコ顔のお地蔵さん的な石像やこの時期になぜかポツンとさいた桜の花を見ていると、どこからともなくわらわらと犬が集まってきた。大きい犬小さい犬老若男女、さまざまな犬がやってきて、辺りはいっぺんに賑やかになった。

友だちとの久しぶりの再会が嬉しくて仕方ないんだけど、何をどうしていいのかわからなくて、ただただワンワンヒンヒン鳴く犬や、無言でワンプロを始める犬、犬見知りなのか怖がりなのか、しっぽをお尻に巻き込んで唸る犬、犬にもいろんなタイプがあるんだなぁ、と感心する。猫の場合はもう少しシンプルだ。シャーッと言って怒るか、無関心を装うかだろうなぁ。猫は気高く孤独を好むのだ。
とまぁ、そんなことはさておき、集まってきた犬たちを見ていると、おやおや、アラフィフのボクよりも年上の高齢なお方が多いじゃない。目が少し白濁していたり、被毛に白いものが混じっていたり、腰の辺りの筋肉が落ちていたりする犬の姿がちらほら。でもみんな自由で楽しそうだ。目が笑っている。中には骨つきの鹿肉を骨ごとバリバリ食べてる強者もいる。話しかけてみると、12歳の老犬(人間の年齢に換算すると60代半ば)。ハワイ生まれハワイ育ちの短毛の彼にとって日本の秋はちょっと寒いだろうに、そんなそぶりも見せずに小さな体で豪快に食べている。すごいじいさんだ。そういえば、この前ホーリーが「ぽんずさん、歳とったら腰と歯が大事だから、ちゃんとケアして鍛えておいたほうがいいよ。」なんて言ってたけど、目の前で鹿肉を骨ごと食べる超元気なじいさん犬を見ていたら、もしかしたら、それはホントかもしれないなぁ、なんて思っちゃったよ。「腰と歯は命!」ってこと。

ほかにも、お洒落に余念がないまもなく13歳になるトイ・プードルや小径をダッシュするこれまた12歳のトイ・プードル、旧式のワーゲンビートルに乗って颯爽と現れ、なぜか水遊びをして帰っていった10歳になるラブラドール・レトリーバー(チョコ)、物憂げな詩人のような表情を見せるジャック・ラッセル・テリアなどなど、伊豆高原には元気な老犬がなんと多いことか。わりと大きいいくせにビビリな甘ったれのぽんさんも元気だ。ぽんさんは、つい数日前に知り合ったミックスの元保護犬で、「ぽん」つながりのせいか、なぜかボクとは気が合うんだよね。光の当たり具合によってはオオカミのような風貌になるちょっと強面の犬なんだけど、笑顔がかわいい気のいいヤツなんだ。彼とはこれからもいい友だちでいたいなぁ。

さて、猫も犬もすこぶる元気なんだけど、あまり元気じゃないヤツがひとり。ホーリーだ。アイツ、ここ数日くしゃみを連発して鼻水がズルズル止まらないらしい。本人が言うには秋の花粉症らしいんだけど、ボクは違うんじゃないかという気がするんだよね。ここ数日で急に寒くなったでしょ。つい数日前までは窓辺で風にあたりながら昼寝するのが気持ちよかったのに、今じゃコタツが恋しくて恋しくて。それほどに気温が急降下しちゃったから、その気温差のせいなんじゃないかって思うんだよね。経験豊富な老犬の皆さんにもご意見を伺ったんだけど、犬も気温差で鼻の粘膜が刺激されてくしゃみを連発したりすることがあるらしいんだ。人間も気温差が原因でくしゃみや鼻水などのアレルギー症状が出たりすることがあるらしいってチョコラブのオロさんが言ってた。なんでも「寒暖差アレルギー」っていうもので、その名の通り、急激な寒暖差が原因で花粉症のようなアレルギー症状が出るらしいんだよね。

グーグル教授によると、寒暖差アレルギーの対策は、「気温差を小さくする」「血流を良くする」「自律神経を整える」なんだって。ホーリー、靴下はけよ、風呂入れよ、あったかいもの食えよ、早く寝ろよ、また来週! ケーーーーーッ!