【夢旅 046】旅ゆけばぁ〜 ①

 

旅で出会う自由な動物たち

あ〜、筆が進まない。

と、この一行を書いてからどんだけ時間が経ったろう。そよ吹く風がゆらゆらと薄いカーテンを揺らしていた午前10時。朝ご飯をちょいとつまんで、ホーリーが掃除してから1分と経っていないキレイなトイレで用を足し(猫あるある?)、新鮮な水をペロッとふた舐めほどしてから執務室で前述の1行を書いた。そして、寝た。

なんで寝ちゃったかなぁ。すでに締め切りを過ぎているというのに、なんで「あ〜、筆が進まない。」なんてヤル気のない書き出しをするかなぁ。

原因はわかっている。あまりにも気持ち良すぎるんだ。いきなりの爽やかな秋は。そう、今年の夏はずっと暑かった。異常に暑かった。なんたって、この夏は30℃以上の「真夏日」が90日もあったんだから。そして、どうせきょうも暑いんだろうなぁ、なんて油断していたら、ストンと落とし穴に落とされたみたいに、不意に涼しくなって、外ではセミに代わって秋の虫が鳴いて、「アノネソレデネアソコンチノネコガサクノウエカラアシフミハズシテネフトッチャッタカラホネオレテネ(これ、ホントの話)」なんてガビチョウが騒ぐのに代わってヒヨドリ(ガビチョウに比べたらおとなしい)が鳴いてる爽やかな午前。そりゃ猫じゃなくても寝るでしょ。見ればホーリーも気持ち良さそうに寝てるし。

寝ぼけた頭で何を考えるでもなくボンヤリしていたら、そういえば最近旅をしてないことに気がついた。もちろん、ちょこちょことあちこち行ったりはしてるんだけど、もうずっと長い歩きの旅をしていない。ホーリーにすべての荷物を持たせて野宿をしながらテクテク歩く「時速4kmの旅」は、実に疲れる。そして、お腹が空く。いつも「ハラヘッタ〜」って言いながら歩いているような気がする。でも、小さな冒険がすっごく楽しいんだ。

そんな歩きの旅ではいろんな動物たちに出会う。今回はその中でも自由奔放、思うまま気の向くままに暮らす動物たちのことを書こう。
って、いつの間にか筆が進んでるじゃん。いいぞいいぞ、その調子だ!

歩いていて出会う自由な連中は圧倒的に猫や犬が多い。都市部にもウチの近所のピーさんのように自由気ままな猫もいるので、地方の山村で暮らす自由な猫たちというのはすぐにイメージできると思う。でも、犬は違うよね。都市部では、好きな場所で昼寝したり、気の向くままにふらふらと散歩する犬なんて皆無だけど、歩きの旅をしていると、小さな集落のはずれとか、車通りの少ない田舎道で自由な犬にひょっこり出会ったりする。危険を感じたことは一度もない。猫のボクにも彼らは穏やかに接してくれるか、もしくはガン無視。
自由な彼らはおしなべて気のいい連中だ。「どうも。」と挨拶を交わすだけの場合もあれば、「ご飯食べた?」とか「近くにコンビニある?」なんて、ちょっと立ち話をしたりもする。

ボクは猫だから、地方で暮らす自由な猫たちとはもう少し込み入った話もする。午後遅くになってそろそろ野宿場所を決めなければいけない時に地元の猫に出会うと、まず最初に野宿ができる優良物件がないか尋ねてみるんだ。すると、「ついてきな。」って言って案内してくれる猫がいる(これもホントの話。愛想のいい白黒の猫についていったら屋根付きトイレ水道至近の超優良物件に行き当たった)。そう、猫はなにかと頼りになる。

旅で出会う動物の中には、もちろん野生動物だっている。中でもわりとよく出会うのがサル。山の上のお寺、山あいの集落、町外れの公園、サルとはいろんなところで出会って、その度に睨み合いになる。まだ闘いになったことはないけれど、一度猫パンチをお見舞いしてやりたい。

野生動物の中で会いたくないのがクマ。特に、ヒグマに会うのはなにがなんでもご免こうむる。ツキノワグマ(頭胴長110〜130センチ程度、体重はオス80キロ程度、メス50キロ程度)なら、もしかしたら、百にひとつくらいはなんとかなるかもしれない。でも、ヒグマ(頭胴長200〜230センチ程度、体重は150〜250キロ程度。400キロを超える個体もいる)はムリ。出会ったが最期、万にひとつも勝てっこないと思う。クワバラクワバラ。
そうそう、できればヘビにも会いたくないもんだ。一度、河原の崖をヨイショって登ったら、目の前30センチくらいのところに蛇がいたんだ。わりと小さなヘビだったんだけど、とぐろ巻いて尾の先をたてて左右に振ってた。その尾の先から「カラカラ」っていう音が出てるのよ。映画なんかの砂漠のシーン出てくるガラガラヘビそのものって感じ。めっちゃ威嚇されてるの。あれ、怖かったなぁ。でもさぁ、ガラガラヘビって日本にはいないよね。あのヘビ、なんていうヘビだったんだろう。って、二度と会いたくないけどね。

北海道ではキタキツネとエゾシカによく出会う。どちらも普通に街中の道路を歩いていたりするんだよね。ホーリーは、野宿でテントを張った時は必ず靴をテントの中に入れるんだ。「なんで靴を中に入れるんだい?」って訊ねたら、「動物に靴を持っていかれたらヤバイでしょ。靴は歩きの旅で一番大切なアイテムだから。」とのこと。

ごもっとも。

あ〜、歩きの旅がしたい。
朝から夕方まで歩いて、いろんな動物や人と出会って話しての一期一会。クタクタの体でテントに入って、中でお腹いっぱいご飯食べて、寝る。そして、朝起きて、ご飯食べて、歩く。くる日もくる日も毎日歩く。ときには、誰もいない河原で焚き火をしながらケモノの気配に耳を傾けたりする。でも、聞こえるのは川の瀬音だけ。炎が揺らいで、ボクとホーリーは自然の一部になる。
な〜んて、そんな旅を久しぶりにしてみたいなぁ。