【夢旅 025】 海から森へ、森から海へ、猫の島へ 東北横断歩き旅①

 

 

 

 

時速4kmで、ココロとカラダのデトックス

せっかくの夢旅だから、今回は少し長い旅の話をするね。
いつもボクについてきて何かとうざいホーリーだけど、ヤツと歩きの旅をするのは好きなんだ。くる日もくる日も朝から歩いて、暗くなったらテントを張って、夜はひとつの寝袋の中でくっついて眠る。(こうすれば寒くないんだ)
歩くスピードは時速4km。15分で1kmを歩き、1時間で4km進む。車なら1時間くらいで行けちゃうところを丸一日かけて歩いたりするんだ。

なんでそんな「非効率的」なことするのかって?
それは単に歩くことが楽しいから。それにね、時速4kmくらいだといろんな発見があるんだよ。風は場所によって香りが違うし、風が揺らす草や木の音だって聞こえちゃう。虫やトカゲ、猫や犬、馬や羊、鹿や猪…。歩いてるといろんな生き物にも出会えるんだよ。それに、長い距離を歩くときは余計なことを考えないから、アタマの中が超シンプルになるんだ。昼ごはんなに食べよ、晩ごはんいつ食べよ、もうどのくらい歩いたかな、お腹すいたね、と、いたってシンプル。猫のボクはもともと難しいことを考えるのが苦手だから人間以上にシンプルになっちゃう。で、「うわぁ、生きてる〜!」って、いのちを実感できるんだ。だから、歩きの旅が大好き。そして、歩いてると体の奥のほうに沈殿してる毒のようなものがスーっと消えていくのが分かるんだよねー。

今回、ボクとホーリーは東北地方を横断して、日本海から太平洋まで歩くことにした。最終目的地は猫の島「田代島」。宮城県の石巻沖に浮かぶ小さな島で、そこにいるボクの仲間たちに会いに行く旅。280kmくらいを歩いて東北を横断して、海を渡って島に行くんだ。(島には船で渡る。だって、ボクは泳げないから)

ゴールデンウィーク直前の風が強くて肌寒い朝、新幹線で新潟まで行き、そこから日本海沿いを走る羽越本線に乗り換えて山形県を目指して北上。トンネルを抜けたら日本海に出た。単線の線路を北に向けて走るローカル線。新幹線は速すぎて移動するだけの乗り物だけど、こういう列車はいいよね。旅してるって感じ。あ〜、なんだかワクワクしてきた。

午後2時少し前、「小波渡(こばと)」という風情のある名前の駅で列車を降りた。降りたのはボクたちだけで、駅員もいない無人駅。こういう無人駅って、極上の「野宿物件」だったりするんだ。駅だから必ず屋根と壁があって雨風がしのげるから、それだけで野宿物件として「○」。そこにトイレと水があったら極上の「◎」。近くに温泉なんてあろうものなら、もうそこに住んじゃおうかって思っちゃう。そのくらい快適なんだ。
でも、ここは旅のスタート地点。泊まるわけにはいかないので、ボクたちは歩き始めた。

 

気温20℃、風が少し強いけど晴れていて気持ちいい。遠くに立派な雪山が見える。なんていう山?って聞いたらホーリーが即答してくれた。こういうところは執事らしくてよろしい。
雪山の名前は「鳥海山」。山形県と秋田県の県境にある山で、標高は2,236m、日本百名山のひとつで「出羽富士」って言われてるんだって。青い海と白い雪山のコントラストがすごくキレイでしばらく見惚れちゃった。「ぽんずさん行くよ。」と、ホーリーの声で我にかえった。そうだ、歩かなければ1ミリも前に進まない。

この日の目的地は「由良」。海水浴場があるから野宿できるだろうってことらしい。砂浜に張ったテントで寝るのって快適なんだ。昼間の陽の光で夜でも砂があったかいから床暖房の部屋で寝てるみたいだし、砂って体にフィットするから寝心地いいんだよね。この時期の東北はまだまだ寒くてさ、朝晩は10℃くらいにまで気温が下がるから、砂浜での野宿はありがたいんだ。

ところが、この日は風が強すぎて砂浜にテントを張るのはちょっと危ないってことで、結局、公衆トイレの裏にテントを張って寝た。まぁ、トイレと水道がすぐ近くにあって便利だし、極上とは言えないけど、波音の心地いい優良物件なので文句ないない。
暗くなるまではまだ少し時間があるから、目の前の島「白山島」まで赤い橋を渡って行ってみたんだけど、いきなり263段の階段を登らされて着いた先は白山神社。ゼーゼー言いながらホーリーとふたりで楽しい旅になるように神さまにお願いした(なんの神さまか知らないんだけどね)。それにしても、神社とかお寺って、なんでこうやたら高いところに造るんだろうね。四国香川にあるかの有名な「こんぴらさん(金刀比羅宮)」なんて1,368段もあるっていうし、この旅でも出てくる山形市の「山寺(立石寺)」も1,000段以上の階段を登った先にある。神さまとか仏さまって超ドSだよね。

島の散歩から戻ったら夕陽がキレイでさ、太陽が日本海の水平線に沈むまでずっと見入っちゃったよ。
すぐ近くでミャーって鳴いたのは猫じゃなくて鳥だった。ウミネコっていうんだって。カモメに似てるけど、カモメは冬にやってくる「渡り鳥」で、ウミネコは一年中いる「留鳥」。くちばし全体が黄色いのがカモメで、ほぼ黄色だけど先のほうが黒と赤のくちばしを持つのがウミネコ。(これ、もちろんグーグル先生直伝)

あ、階段とかウミネコの話をしてるうちにスペースがなくなっちゃった…。気がつきゃ一日分しか書いてないじゃん。てことで、今週はここまで。こんな調子じゃ来週はどこまで行けることやら。この旅、長くなるかもね。

<旅の初日>
天気:だいたい晴れ
行程:小波渡駅〜由良海岸 歩行距離:約5km(話は長いけど歩くの少なっ!)
宿 :由良海水浴場。潮騒を聞きながらトイレ裏で爆睡(寒っ!)