【夢旅 018】 白い妖精にひと目惚れ

 

 

 

裏磐梯で出会ったツンツンお嬢
まただよ。また来ちゃったよ。よせばいいのに、まーたさむーーーーいとこに来ちゃったよ。このあいだ、雪の上に立って2分1秒後には肉球がジンジンして感覚無くなるわ、全身からいやだいやだビームを放出するわで、雪なんてもんはぬくぬくの部屋の中から見るもんだって悟ったはずだ
よね、ボク。夢旅ができるんだから、あったかいところに行けばいいんじゃね? ってことに気づいたのはついこのあいだのことだよね、ボク?
それなのに、なんでまた、ガッチガチに凍って雪が積もった湖に来たんだろ。なんであったかい南の島じゃなくてクッソ寒い北の山の湖に来ちゃったかなぁ。

あんまりにも寒いもんだから下向いて歩くでしょ。そうするとね、真っ白なの、足元が全部。どこまで行っても白いの。で、眩しいの太陽の光が反射するから。だから、今度は上向くでしょ。するとね、やっぱり眩しいの、太陽が。下向いて上向いて、また下向いて上向いて。って、まるで
赤べこじゃん。猫なのにべこ。「べこ」って知ってる? 東北地方の方言で「牛」のことなんだって。いま、ほとんどの人は牛の鳴き声を「モー」って表現するよね。でも、昔は「ベー」が一般的だったという説があって、そのことがべこの由来らしいんだけど、ほんとかなぁ。牛の鳴き声がベーってどうなの?

英語では犬の鳴き声を「バウワウ(bowwow)」、ニワトリの鳴き声を「クックドゥールドゥー(cock-a-doodle-doo)」って表現するって知って、ええええ~っ違うちがーう、全然そんな風に聞こえないよー、って思ったけど、牛の「ベー」は、もっとちがーう! でも、もしかして、東北
の牛にはなまりがあって、ホントに「ベー」って鳴いてたりして。ちなみに、牛の鳴き声の英語表現は「ムー(moo)」。うーん、英語圏の牛には方言がなかったんだろうか?

話は戻って、湖の上はとにかく冷たいし眩しいわけ。こんなとこ喜んで歩いたり走ったりするのは犬くらいのもんだろうなぁって思っていたら、案の定、犬の足跡を発見。雪の上に点々と続くでっかい足跡を追って行ったら、いたね、でっかい犬が。この犬ボク知ってるよ。ゴールデン・
レトリーバーっていって、猟師が鉄砲で打った鳥を回収(レトリーブ)する鳥猟犬だよね。水があったらとりあえず飛び込んじゃう。猫がヒモ見てチョイチョイしちゃうのと同じで、気がついたら水の中。バカみたいに水が好きな犬種だよね。ビショビショになるのが好きだなんてどうか
してるよ。まぁ、向こうは向こうで、ヒモでチョイチョイって、猫なんて単純だな。オレ様のフサフサの尻尾で猫が釣れそうだぜ、なんて思ってるかもしれないけどね。(たぶん、尻尾で猫は釣れると思う。猫は単純)

それにしても、ゴールデン・レトリーバーってのはよく笑う犬だよなぁ。何が楽しいのかわからないけど、とにかくしょっちゅうニコニコしてる。足跡の先の犬も笑ってた。この寒くて眩しい雪と氷の真っ白な湖の上で満面の笑顔だったわけ。わっかんねーなー。そして、この妙に楽しそうな犬と一緒にいたのが、なんと、ヤギ。ピンクの服を着た真っ白い子ヤギ。
で、率直にいう。ボク、惚れた。マジ好きになった。
もちろん、禁断の恋だとは理解してる。でも、このドキドキは抑えられそうにないよ。一目惚れって、こういうことをいうんだなぁ…。
いま鹿ジャーキーを目の前に出されても、ヒモを見せられても、目の前で犬が尻尾を振っても、ボクはまったく反応しないだろう。
なぜかって?
ボクはいま、あの犬の向こうにいる白く可憐で妖精のような子ヤギに首ったけ(死語?)だからさ。色白で柔らかそうな毛並み、つぶらな瞳(ヤギの瞳孔については、「夢旅 011」を読んでね)、ボクと同じ淡いピンクの鼻、頭の上にピョコンと出たちっちゃいツノがこれまたキョセイオスゴゴロをツンツンするんだよなぁ。天真爛漫で自由奔放なお嬢(たぶん)。誰に媚びることなく「しなさいよ系」の少しだけ上から目線な感じ(これもたぶん)がたまらないんだなぁ。まだお嬢の名前を聞くどころか、話しかけることもできないボク。ああ、白は眩しい。そして愛し
い。なんか、雪の白さをも好きになってきたような…。白っていいね(やっぱり猫は単純)!
はぁ…、ボク、まだここにいたいかも?