【夢旅 014】 夜更けに忍び寄る “魔女の一撃” にご用心!
意識はあるのに1ミリも動けない! 金縛りよりも恐ろしい “GKR”
さてさて、今回、ボクは旅に出なかった。週末キャンプに行くつもりだったんだけど、やめにしたんだ。というか、誰かさんのせいで行けなくなっちゃった。それで、いま、ふてくされて家の窓辺でひなたぼっこしてるってわけ。
なんで行けなくなったのかって?
それは、寒いから。じゃないよ。だって、もう立春で、暦の上では春でしょ。
菜の花が咲いて、ひなたぼっこが心地いい場所でのキャンプは、花に囲まれながらの昼寝が目玉の、猫には極上の休日。昼寝して鹿ジャーキー食べて散歩して鹿ジャーキー食べて寝袋にくるまって寝て夜中に鹿ジャーキー盗み食いして。って、切れ目なく楽しいサイコーの休日。
になるはずだったんだよ!
そんな極上の休日をダメにした張本人は、もちろんホーリー。キャンプの日の朝、きょうは出かけられませんって、やつがギブしたんだ。
ウザいホーリーなんかほといて、ひとりで行けばいいじゃん、って思うかもしれないけど、キャンプは別。自然のなかでのキャンプは大好きだけど、ボクはテントを張れないし焚き火もできない。っていうか、そういった雑用はぜんぶやつの仕事なんだよね。ホーリー(猫語では「執事」の意)だからね。
ワタクシ、ぽんずさんと行くキャンプの支度を整え、気合を入れていつもよりも早く寝ました。いきなり一人称が「ワタクシ」になってしまいましたが、ここからは執事のワタクシがお話しします。
みなさん、朝、目が覚めたとき、1ミリも動けなくなってたことってないですか?
頭が上がらず、体を横向きにするなど一生かかってもできそうになく、動くのは左右の手のみ。無理やり動こうとした日にゃー、あなた、息が止まります。痛くて。「う」に「 ” 」付きでうめいて、ホントに呼吸できなくなっちゃうんです。同じ動けない現象でも、金縛りなんかよりも断然恐ろしい。外国では「魔女の一撃」と恐れられている、あの腰の激痛、「GKR」。そう、ギックリです。キャンプに出かけようとした日の夜更け、ワタクシは魔女の一撃を食らっていたのです。
寝ているあいだに魔女の一撃を食らった腰ですが、朝目覚めるまではわりとおとなしく、寝返りを打つときにわずかに痛みを感じる程度で、スヤスヤ眠れる。目覚めるまでこの騙しの手口にコロッと乗せられていたのです。そして朝、突然の激痛にうめき驚き、絶望の底に落ちていく。
う、動けない…。
そこで初めて気づきます。仰向けに寝ていても、フッと息を吐いた瞬間にズドンッと激痛が襲ってくるってことに。動くも地獄、動かぬも地獄。どうする、自分。それでもなんとかベッドに座るところまでこぎつけ、絶望の底から淵くらいまで這い上がったでしょうか。希望の光のしっぽが見えたような気がしました。けれど、そこで再び絶望の底に落ちるのです。
パ、パジャマが、ぬ、脱げない…。
ボタンは外せる。でも、できるのはそこまで。その時、尿意をもよおしていることに気づきます。朝起きたらまずはトイレに、という当たり前のルーティンがここでは完全に仇。仕方がないので、とりあえずパジャマの件は先送りして決死の覚悟でトイレへ。で、そこで三たび絶望の底に突き落とされます。
べ、便座に、す、座れない…。
(注:最近の男子は、小でも便座に座ってするように家族から教育的指導を受けている、場合がある)
GKRとは、そのように一日に何度も激痛にうめき、息が止まり、絶望の底に落とされるものなのです。キャンプどころじゃないんです。マジで。
そういうワケで、ぽんずさんには申し訳ないことをしましたが、菜の花キャンプはお断りさせていただきました。直立不動のめっちゃいい姿勢で。もちろん頭なんて下げませんよ。そんなことした日にゃー、あなた、膝から崩れ落ちてしまいます。
ここで再び一人称をボクに戻すけど、ボクはいままで、ギックリ腰は人間だけのものって思っていたけど、犬にも原因がよくわからない「急性腰痛症(いわゆるギックリ腰)」っていう症状があるみたいだから、犬の諸君も気をつけたほうがいいかもしれないね。でも、魔女と猫は何かと相性がいいどころか、魔女の相棒が猫なんていうアニメもあるくらいだから、猫のボクはたぶん大丈夫。そうだ! ホーリーには今度、猫の一撃も味わわせてあげよう。