【夢旅 049】ぽよぽよほっぺに神さまのご加護を
赤ちゃんの神社デビュー
ボクが暮らす家のすぐ近く、猫の足で20秒くらいのところに小さな神社がある。毎年大晦日の夜に初詣に行く神社だ。数年前、初詣をして焚き火のそばでお神酒を飲んで酔っ払った(初詣に行く前にすでにいい感じにできあがっていたのだが…)ホーリーが、同じく初詣に来ていた柴犬に「気安く近寄るんじゃねぇ!」とばかりに指をガブリとやられて血だらけになった因縁のある神社だ。「おいぬ様」で知られる御嶽山の「武蔵御嶽神社」にゆかりのある神社で、何かと犬に関わり合いのある神社なんだよね。
ボクは猫だけれど、最近、この神社の前を通るたびに挨拶をしているせいか、神社という場所がとても身近で心安らぐ場所のように感じている。
と、ここまで書くとこの小さな神社に行って何かをやらかした話かというと、そうではなく、これから話すのはまったく別の神社に行ったときのこと。(神社の話には変わりないんだけどね)
日本人のかなり多くが生まれてまもない赤ちゃんのときに神社デビューを経験してるんじゃなかろうか。いわゆる「お宮参り」だ。ボクのような猫の神社デビューは、神社の階段とか狛犬さんの足元あたりで日向ぼっこをすることだけど、人間の赤ちゃんは神社でお参りをしてご祈祷を受けるみたいだね。イナズママークみたいなギザギザの紙がぶら下がってる部屋で、先がとんがっててアヒルのくちばしみたいな帽子をかぶった人がなんだかよく分からない昔の言葉で何か言うのを黙ってうやうやしく聞くのがお宮参りなんでしょ。
なんて、まるでおバカな猫っぷりを丸出しにしちゃったけど、お宮参りのことを何も知らないんだからしょうがないのだ。と、ここはグーグル教授にご教授いただいた。
「お宮参り」というのは「初宮参り」「初宮詣(はつみやもうで)」「産土神(うぶすなかみ)」とも言われるもので、生後まもない赤ちゃんのために執り行う神社の儀式なんだって。
その昔、日本では出血をともなう出産が「けがれ」とみなされてたそうな。それで、「母子の “けがれ” の期間が明ける頃に氏神様にお参りする “忌み明けの儀式” として始まった」のがお宮参りで、赤ちゃんをその土地の一員として神様に認めてもらう “氏子入りの儀式” という意味合いもあるらしいよ。
お宮参りでは、無事に出産したことへの感謝や、赤ちゃんの健やかな成長を願って神様に参拝して、ご祈祷を受けるのが一般的とのこと。
伝統的には、男の子は生後31-32日目、女の子は生後32-33日目とされてるみたいだけど、実際は、赤ちゃんとママの体調を考えて日程を決めるらしいね。フレキシブルな対応、大事だと思うよ。
ちなみに、イナズママークみたいなギザギザの紙は「紙垂」とか「四出」とか「垂」っていうもので、そこが神様が宿る神聖な場所、神域であることを示す印なんだって。って、この漢字読める? 素直に白状すると、ボクは読めませんでした…。(正解は「しで」)
そして、神職がかぶるアヒルのくちばしみたいな帽子は「烏帽子(えぼし)」っていうんだよ。(ボク、これは読めたし知ってたよ。エヘン)
それにしても、赤ちゃんってホント、言葉にできないくらいぽよぽよぷにぷに柔らかくて舐めてみたい衝動に駆られちゃう。猫の舌は紙やすりみたいにザラザラしてて、舐められると痛いんだって。朝、なかなか起きないホーリーの顔を舐めてやるんだけど、「お願いだからザリザリゾリゾリはやめてください…」って懇願されるもの。ホーリーの顔も十分ザリザリゾリゾリしてるくせにね。
ちなみに、猫の舌がなんでザラザラしているかというと、「糸状乳頭」ていう小さい突起がのどに向かってむちゃくちゃたくさん生えてるからなんだ。肉食であるネコ科の動物は、このザラザラの舌で骨についた肉をこそげとって食べるんだよ。
猫の舌で舐めると赤ちゃんがびっくりしちゃうから、ボクは、赤ちゃんの小さな手とかわいさMAXの足に肉球でそっと触れるだけにしておいた。マシュマロのような? 雪見だいふくのような? とにかく柔らかくて温かい肌。ボクは、不思議に安らいで波ひとつない静かな湖面のように心が平穏になっていく感覚を楽しんだ。
もしかしたら、生まれてまもない赤ちゃんの体はまだ「母のバリア」みたいなものに守られていて、バリアなんだけど異物を弾き返すんじゃなくてふわっと包み込んじゃう性質のもので…って、うまく言えないけど、赤ちゃんって、母性そのものにくるまれてるような気がしたんだ。
ああ〜なんか、クセになりそう。
そしてボクは、目の前の赤ちゃんに嫉妬もした。だってね、ママがすっごく美しかったんだもん。赤ちゃんを見る目は慈愛に溢れて優しくて、腕は赤ちゃんにとっての最高級ベッドで、小さな体をふわりと包んでる。赤ちゃんはズルイ。ボクもそんなママの腕に抱かれてみたいって思っちゃった。
普段、洗っても洗っても蘇ってくるホーリーのニオイ、オヤジのニオイ(ゾンビ臭っていうらしい)が充満するベッドに寝ている身としては、ママの腕のベッドが天国のベッドのように思えるんだよなぁ。ボクは抱っこがあまり好きじゃないんだけど、ママなら大丈夫。なんなら、爪も切ってもらいたいくらい。
ママ〜、ボクを抱っこして〜。