
チャチャ日記15
冬の八甲田山で雪中キャンプをする機会があった。八甲田山にインバウンド客を呼び込むために他ではできないキャンプを仕掛けようと企画されたものだ。
今流行りのグランピングという奴だが、フルアシストのおしゃれなグランピングとは違いかなりワイルドなテント生活である。食材は用意されていても自分たちで調理して寝床も自分たちで整える。
しかも氷点下15度の凍るような世界なのだ。都会派のトレンディなおねぇさんにはきっと荷が重いに違いない。
特に難儀なのがトイレである。
国立公園内で特別に許可されたキャンプだから周辺の自然への配慮は厳格で、ゴミの持ち帰りはもちろん、自分たちの汚物も完全に持ち帰らなくちゃならない。
テントの脇ににセットされたテント型のトイレでコトを済ますのだ。
便座はあっても便槽はない。自分でビニール袋をセットしてコトを済ます。
「なんだか嫌な感じ」と僕でさえ戸惑った。
一時は下山するまで我慢しようと思ったのだがそれもできず、結局簡易トイレを利用することになった。
ビニールの中に自分の汚物をポトンと落とし片付けるためにビニール袋に手を掛けた時、驚いたことにまるで違和感を感じなかった。
「毎日片づけているチャチャのウンチと同じじゃないか!」と思ったのだ。
チャチャのウンチ処理のお陰で自分のモノの処理は抵抗なく素早くできた。
僕がチャチャのウンチを片付けている時、チャチャはどんな気持ちなのかなと時々考えることがある。
チャチャはいつも僕のことなど気にせず遠くを眺め「早く片付けてね。」と言うような佇まいである。
「ご主人様、申し訳ないです。いつもいつも僕のウンチ片付けてもらって。申し訳ないです。ありがとう・・・・」というような雰囲気はまるでない。
人間にとって汚物は少し後ろめたく人に見られたくないモノだが、犬にとっては当たり前のことなのだろう。
感謝などまるで感じていない。
「さったと済ませて!」という顔付きだ
ところが食べ物を吐いた時はちょっと違うのだ。
拾い食いをしたり胃の具合が悪くなった時、チャチャは胃の中を吐き出すのだだが、そんな時のチャチャは決まって申し訳ない顔をする。
ウロウロ家の中を歩き歩き回り、ご主人様に迷惑にならない場所を探そうとする。
そして、ついに吐いてしまった時、その場から速やかに立ち去って玄関の端の方に逃げて行き「ごめんなさい、吐いちゃいました。もう2度としません。ごめんなさい。」という顔をするのだ。
僕が吐いたモノを片付けている時も「こんなことをご主人様にさせちゃってすいません。僕は悪い犬です・・」とうつむいている。
そんな時のチャチャはとても可愛い。
お尻から出るモノと口から出るモノの差がこんなにあるなんて不思議だ。
でも、毎回ウンチのために反省していたら切りがないからこれでいいのかもしれない。