鹿肉のベストな与え方は生?それとも加熱する?

わんちゃんとねこちゃんの食事について考えたとき、この食材は生で与えた方が良いのだろうか、それとも加熱した方が良いのだろうか、という話題になることがある。世の中には生食を推奨する方もいれば加熱して与えるという意見の方もいて、どちらが良いのか判断できない飼い主さんも多い印象がある。では、ジビエである鹿肉の食べ方に関してはどうなのだろうか。

 

鹿肉、ジビエ、感染症

 

確かに、現在のような生活スタイルになる以前は犬も猫も外で暮らし、自身で狩りをして獲物を捕獲しなければ食事にありつけない時代もあった。むしろ犬と猫の歴史から考えればペットフードの誕生は最近のことであり、狩りをしていた時代の方が遥かに長いことが分かっている。しかし、今はペットフードが存在し、手作り食という選択もあるため、犬や猫が自身で狩りをすることなくリスクを伴わない室内で安全に暮らせる環境が整っている。そのため、私は食事に関しても安全性を最優先させるなら鹿肉は加熱してから与えることを推奨する。

なぜなら、生や加熱が不十分な状態の鹿肉を食べることは産地や部位、鮮度を問わずリスクを伴う可能性があるからである。具体的にはE型肝炎、腸管出血性大腸菌、寄生虫などへの感染である。もちろん、すべての鹿肉にこういったウイルス、菌、寄生虫が絶対に存在するとは限らない。また、例え存在した鹿肉を食べてしまったとしても必ず感染するとは言い切れない。しかし、生で食べる以上、感染しないと断言することもできない。ここまでの情報と視点のみで判断してしまうと、鹿肉は危険な食材であると考えてしまうこともできるが、この感染のリスクは鹿肉を中心部までしっかりと火が通るように熱を加えることで回避できる。逆に言えば火を使うことができない野生動物たちは、感染のリスクを背負ってでもエネルギーを摂取する目的で食べなければ生き延びることができないため、生食を選択せざるを得ない状況にあるともいえる。このように考えると、今、私たちと同じ部屋で暮らすわんちゃんやねこちゃんに生の鹿肉を与えるということにメリットはなく、極端な表現をすれば感染する機会を増やしているだけと捉えることもできる。

以上より、鹿肉に関しては生食ではなくしっかりと加熱した状態でわんちゃんやねこちゃんに食べてもらうことを私は推奨している。もちろん、森から海への鹿のめぐみ一般食、ウェットフード、ジャーキーは十分に熱を加えて製造しているため、感染に対する心配をせずに安全に与えてもらうことができる食事とおやつである。