森のおはなし

今、あなたが「森の入り口に立っている」としたならば、どんな景色を思い浮かべますか?高い樹木が立ち並んでいる緑の森それとも紅葉に彩られた森でしょうか。高い樹木の下には中くらいの高さの樹木が並び、その下には柔らかな緑の草が並んでいますか?或いは、笹藪が見えたりするかもしれません。耳をすますと、小鳥の囀りが聞こえてくるかもしれないですね。

 さあ 森に続く扉を開けて一歩森へ入ってみましょう。急に樹々が近くなりましたね。森の外で見上げると、青く広がっていた空も、森の中では、高木が枝を伸ばして空を覆ってしまい、枝の合間合間に少し青空がのぞくくらいです。木漏れ日が溢れ、空気はちょっとひんやり感じられ、鳥たちのさえずりもより近くで聞こえます。

森のお話 鹿の恵み 自然環境

 

 ようこそ、森へ!これから少しずつ森をご案内します。

 森は、沢山の生き物が暮らしている場所です。入り口から見えた樹木はもちろん、クマやニホンジカ、イノシシのような大きな動物。キツネやタヌキ、イタチなどの中くらいの動物。ネズミやリス、モグラのような小さな動物。そして、上を見上げる樹々の間を行ったり来たりしている小型の鳥、カラスのような鳴き声のカケスや赤い帽子をかぶったアカゲラのような中型の鳥。そして大きな羽を広げ空を悠々と空を飛ぶ、タカやワシというような大型の鳥たち。フクロウももちろん森に暮らしています。昆虫たちも忘れてはいけません。人気者のクワガタやカブトムシ、ちょっと嫌われ役のカメムシなども森に暮らしています、他に。書き並べると、きりが無いのでこのあたりにしておきます。

 森を外から眺めると樹々しか見えませんが、森は沢山の生き物のHOMEです。

 HOMEの土台を作る大切なものとして土があります。かがんで手に取ってみると、少し湿り気があって、鼻を近づけるとちょっと酸っぱいような甘いような、どことなく懐かしい匂いがします。見ると、枯葉が混じり、一言で「土」と言っても濃い茶色や赤っぽい茶色、黒っぽい茶色が混じっています。土の香りは、落ち葉や、朽木、森でくらす生き物たちが命を終えたあとを菌類が分解する、そのときに出す香りだと言われています。菌類を直接目で見ることは出来ませんが、菌類たちが働くことにより、この森で暮らしていた生き物たちの命が、時間をかけてその森の土へと姿を変えていきます。森の土は、命の循環によって積み重ねられたものなのです。

 ある日、その土の上に一粒の種が落ちました。新しい命の物語が始まります。

 次回は、森を構成する樹々たちの種のお話をいたしましょう。