好物はカモそれぞれ

 冬になると、郊外のちょっとした池や川にカモが浮いているのを見ることができます。カモの多くは冬季に日本にやってきます。一見同じように見えますが、カモには多くの種類があり、生活もさまざまです。種類によって主食も異なります。

 カワアイサやウミアイサなどアイサ類とよばれる仲間は、魚が主食です。魚を捕るために水中に潜ります。潜って魚を追うため、体もスリムです。

 スズガモやキンクロハジロなど海ガモ(潜水ガモ)と呼ばれる仲間は、水中に潜って、主に水草や貝を採ります。海で見ることが多いのですが、河川や湖沼にもやってきます。水面に浮いている際は重心が低く、水の上に尾羽が出ないのが特徴です。

 一方、マガモやカルガモなど淡水ガモと呼ばれる仲間は、主に水面で餌を採ります。食物を水ごと吸い込んで、嘴(くちばし)の横から水を排出しながら濃しとって食べています。体の大きさの割に軽いので、潜るのが得意ではありません。水面上に体の多くが出ており、尾羽も水面上に出ています。

この仲間のハシビロガモは平べったい大きな嘴をしています。大きな嘴で水面に浮かぶ小さな植物片などを大量に濃しとるので、他のカモが食べないような小さな餌があれば生きていけます。一方、他のカモよりも小さなコガモという種類は、水面上のやや大きな餌をついばむこともします。

淡水ガモは、水面の餌が少ない時は、逆立ちをして、首を水中に伸ばして水草を食べます。オナガガモは、首も尾も長いので、逆立ちをして長い首を活かして他の淡水ガモよりも深いところにある水草を採ることができます。長い尾は、逆立ちをする際に、バランスを取るのに使われます。

 様々な種類のカモが、同じものを同じように食べていれば、厳しい競争になってしまうでしょう。他のカモとは異なった物を食べ、異なった食べ方をすることで、同じ場所に居てもこうして共存できるのです。

 

<一般社団法人倫理研究所「職場の教養」誌に「野生の教養」というタイトルで掲載された文章を加筆・修正し、写真をつけました。>

 

水面の餌を摂るカルガモ