がんばれラスティ 最終回

 

ラスティは、最後までよく頑張りました。でもとうとう、旅立ってしまいました。

学び

良く「思い出を沢山残して逝きました」と言ったりしますね。13年半も一緒にいましたから勿論本当にたくさんの思い出があります。でも、ラスティは多分、普通の犬よりずっと難しい犬でしたから、私たちは色々学ばなければなりませんでした。一週間に何回も咬まれて怪我もしましたし(彼は、傷痕もたくさん残してくれてます…。)他の犬や人間に咬みつくのをどうやったら止められるのか悩みました。ですから、本も沢山読みましたし、テレビで「問題犬を訓練する」シリーズも見ていました。講習会に行ってお話を聞いたりもしました。

頭を使わせながら運動をさせれば良いかもしれないとも考え、ドッグダンス教室にも通いました。ドッグダンス教室ではハンドラーの脚をくぐったり後ろ向きに歩いたりといった曲芸のような技以外にも、「待て」「伏せ」「ゴーアップ(一段高いところに上がる)」「あちらに行け(指さした方向へ行かせる)」「ゆっくり」などの実用的な指示も学び、できるようになりました。これはかなり便利です!でも、私はリズム音痴ですし、彼もいい加減な性格なので、コマンドを出す前に「次、これですか?」などと勝手に「踊って」しまうので、人様の前でダンスを披露するには至りませんでした…。

ラスティの咬み癖が私たちにとって生命の危険を感じるくらいになった頃、たまたま森の公園で出会った訓練士さんに紹介されて、ある別の訓練士さんのところに行ってセッションを受ました。散歩の仕方など、テレビでカリスマトレーナーがやっていたやり方を実際に手ほどきしてもらいました。何回か、他の問題犬と一緒に歩く訓練(パックウォーク)もしました。それらも今となっては楽しい思い出ですけれど、当時は必死でした。

ラスティは、決して「いきなり襲い掛かるような『攻撃的な犬』」ではなかったのですが、他の犬と「クンクン」と挨拶をして「あ、いい感じかな?」と思っていると突然ガウッとなったりするのです。(理由を言ってくれませんから、なぜそうなるのか全くわかりません)そして、そこでリードを引こうものなら、こちらが攻撃されてしまいます。(既にテンション・マックスになってますから、それを発散させなければならないからです。攻撃の相手を変える『転嫁行動』というそうです。)そんな具合でしたから、「あそこの角を曲がったところから仲の悪い犬が出て来たらどちらによけようか?」などと考えたりして、散歩は、犬を飼う前に思い描いていたような、のんびりとした楽しい時間ではなく、緊張感でいっぱいでした。犬の訓練の番組の中で、まるで神業の様に犬を訓練するドッグトレーナーは「犬が攻撃に入る0.5秒前に指示を入れなさい」というのですが、そんなことなかなかできません。一回だけ、たまたまタイミング良く指示が入って、いつも喧嘩になる犬の横を通っても「な~んだ、お前か~ふふ~ん♪」という感じで擦れ違うことができてびっくりしました!「0.5秒技」は、できた時は効果ありです!

世の中は、ラスティのような難しい犬ではない場合が殆どで、躾なんて必要ない犬が多いと思います。その場合でも、犬と人間の間でキチンと理解しておいた方がいいのが、「(犬ではなく)人間が犬をリードする」ことのようです。犬を厳しく躾ける必要はないのですが、いざというときには、飼い主が犬を守らなければなりませんから「飼い主の言うことは聞かなければならない」という基本を犬に教えるのは大事なことだと思います。その際、一番の基本は「常に穏やかで、自分がこの犬のリーダーだという自信」をもって犬をリードすることだそうです。(問題犬に対処するときは、これがなかなか難しい…)そして散歩をすることが一番の訓練の場になります。散歩の時に飼い主と犬の間に一定のルールを設け、それを徐々に教えてあげるといいようです。

例えば、玄関を出るときには、①興奮しないで落ち着かなければいけない。(落ち着くまで出さない)②飼い主より先に外に出てはいけない。(前に出たら、リードを引いて戻す)③(散歩の間の一定時間は)飼い主の脇について、飼い主より前に出ないで歩く、などです。そもそも、犬は「ルール」なんて概念を知りませんから、人間が教えても、最初は何をされているのか分からなくて、思い通りには行きません。時間がとても掛かったりします。飼い主の忍耐力が養われる場になります。又、散歩の時以外でも④食事が出されても、「よし」の指示があるまでは食べ始めない⑤入ってはいけない場所を設ける⑥ある場所からは勝手に出てはいけない、というルールを作るのも有効でした。

そして、ルールを教えて、できたら「褒める」のがとっても大事だそうです。(私はそれをつい忘れてしまうダメリーダーでした…)褒めてもらって嬉しいから覚えるし、指示に従うようになるんですよね!(成長した自分の子供達に「ママは昔から褒めるの下手だったからね~」と言われました…)

犬の訓練に関しては、本当に沢山の訓練士さんとそれぞれのやり方がありますから、犬や飼い主さんに合ったやり方を探されるのがいいと思います。

出会い

そして、ラスティが残してくれたもので、とっても素敵なものが、出会いです!

ラスティと友達になった犬を通して、ラスティの性格もよく分かるようになりましたし、みんな性格が違うので、犬の面白さも良く分かるようになりました。ラスティと仲の良かったメスのワンちゃんが、パパさんがリタイアされて散歩をされるようになったら、その後はラスティに素っ気なくなりました。(パパloveが強すぎて、可愛くて、笑えます…)メスのワンちゃん同士がラスティを取り合いっこしたこともあります。(ふふふ…これは飼い主としては何故か悪くない気分です)犬同士で喧嘩が始まるとラスティが仲裁に入ったこともあります。(カッコよかったです!)初めて会ったメスの年下のワンちゃんにガウッとやったら5倍返しされてその後はその子に失礼のないようにしていました。(基本弱虫ですから…)

人との出会いも沢山ありました。

彼と毎日散歩をしたお陰で、色んな人と出会ってお話ができました。犬を連れている人、今はいないけど以前犬を飼っていたことがある人、これから犬を飼いたいと思っている人、犬は飼えないけどちょっと犬の話をしてみたい人、犬は関係ないけど誰かと話しをしたい人…など。特にコロナ禍では、散歩の時の会話が私たち人間にとってとても大切な息抜きにもなりました。

そして、渡邊さんとの素敵な出会いです。この出会いがなかったら、ブログにラスティのことを書くということもありませんでしたし、じっくりとこの13年間を振り返ることもしなかったと思います。とても貴重な経験をさせて頂いたことを心から感謝申し上げます。

そして私のつたない文章を読んで下さった方にこの場をお借りして御礼申し上げます。

いつかどこかで出会いがあれば素敵ですね。どうぞお健やかにお過ごしくださいますように。