お腹の中で牧畜をするシカ – Dr.南の生きものがたり
私たちは、バランスのよい食事をすることを勧められます。しかし、シカは基本的には植物しか食べません。彼らは、どのようにして栄養を採っているのでしょうか?
シカの主食である植物のおもな構成物はセルロースです。しかし、このセルロースは哺乳類の消化酵素では分解できません。シカやウシなど反芻(かみもどし)する動物は胃の中にさまざまな微生物を飼っていて、その微生物のおかげでセルロースを分解して、栄養分にしているのです。反芻というのは、いったん胃にいれた植物を口に戻して、何度も噛むことです。そうやって、植物を細かくして、さらに唾液と混ぜて微生物による分解がうまく進むようにPH(酸性・アルカリ性の程度)を調整します。そして、胃の中にいる微生物がそれらを食べて(発酵・分解)、シカが利用可能な栄養にしてくれるのです。微生物はこのセルロースを食べて増えるのです。シカの胃は4つに分かれているのですが、このような微生物による分解は第一胃や第二胃で行われ、発酵が終わると、これらは第三胃で水分が吸収され第四胃でさらに消化され、最終的に増えた微生物と利用可能になった栄養物が小腸で吸収されるのです。つまり、シカは胃の中にいる微生物に植物という餌を与えて増やして、それを食べていることになります。つまり、私たちが肉牛を牧場で育てて、食べているのと同じでなのです。