【夢旅 042】ぽんずの夏休み日記⑤

白黒の不思議

夏休み日記①で発作的に白黒動物について研究してやろう、なんて口走っちゃったけど、真夏の動物園では白黒もカラフルも単色も、どいつもこいつも「いねーし!」で、たまに見える場所にいたとしても、ぐでんぐでんのヤル気なし。極めつけは、憧れのオオカミさんの「うっかりエアコンをつけ忘れた部屋でお留守番するハメになった犬」化現象。トロンとした眼と半分開いた口、森の王者としての威厳も野性味も1ミリも感じられない体たらく。ボクを見る半眼が「ヤル気スイッチ? はぁ? それ、なんすか?」って言ってた。ゼッタイ言ってた。

ここでグーグル教授のジャブをひとつ。『「半眼半口(はんがんはんぐ)」というのは、仏教において、「悟りを開いた者の顔つき」を形容した言葉です。』なんだって。読んで字のごとく、目も口も半開きにした状態らしいんだけど、ヤル気スイッチを紛失したオオカミさんは、あのとき何かを悟ったのかなぁ。(そうは見えなかったけどねー)

話を白黒に戻そう。
白黒といえばまず「パンダ」だろうと思う。丸っこくて大きな顔に小さめの黒い耳がピョコンとたってて、目の周りが黒い白黒の熊だ。パンダの白黒には理由があるらしい。もちろん、生き物あるあるで、「諸説ありますが」という前置きつきだけどね。

パンダがなぜ白黒なのかというと、「背景と同化しやすいから」っていう説が有力みたい。パンダの毛って、よくよく見てみると、白い毛に混じって茶色の毛があって、一見薄汚れたように見える。この薄汚れ感が輪郭をぼかして背景との同化にひと役買ってるみたいなんだ。「寄り」じゃなくて「引き」で見ると、あら不思議、岩や倒木に紛れてどこにいるかわからなくなってしまう、らしいよ。パンダって実は、忍者並みに擬態上手だったんだね。

ついでに、パンダの目の周りが黒いのは、目を大きく見せて相手を威嚇する役目があるという説や、野球選手が目の下に黒いシールみたいなものを貼ったり黒く塗ったりするけど、あれと同じで、白い顔に反射した光でまぶしくならないようにするためという説もある。(野球選手が貼ったり塗ったりするのは「アイブラック」っていうらしい。パンダがいなかったので写真がないです。ごめんなさい・・・)

パンダの次に思い浮かぶ動物、それはやっぱり「シマウマ」。いやいや「マレーバク」だろ。というマレーバク推しの方がいるかもしれないけれど、パンダが白黒アイドル界の不動のセンターだとしたら、シマウマとマレーバクはセンター横で同格ということで許してね。

で、シマウマ。
こちらもやっぱり「諸説あるある」なんだけど、白黒の縞模様だとツェツェバエといった吸血性のハエが寄ってこなくなるんだって。あと面白いのは、黒い線と白い線では空気の流れに違いがあって、それによってできた小さな空気の渦のおかげで皮膚の温度が上がりにくくなるらしいんだ。体中に最近流行りの小さい扇風機がいっぱいくっついてるようなイメージだろうか。なんでも、同じ地域に住む縞模様のない動物と比べて、シマウマの皮膚の温度は3℃も低いそうなんだ。ボクも縞模様にしてみようかなぁ。シマネコのぽんず、表面温度が3℃下がって涼しいでーす。

そして、マレーバク。
マレーバクほど白黒はっきりしてるヤツはいないよね。あれだけバッキバキに白黒だと目立つと思うんだけど、あれにもちゃんと理由があるみたいなんだよね。白黒みたいにコントラストの強い模様だと体の輪郭がボヤけちゃうんだって。それで、強い相手に見つけられにくくなるってわけ。こういうバッキバキの色を「分断色」って呼ぶらしいよ。
また、マレーバクって前と後ろが黒で真ん中が白でしょ。夜行性のマレーバクを暗闇で見ると、どっちが頭でどっちがお尻かわからなくなるから、「保護色」の効果もあるみたいだね。
でもさ、頭かお尻かわかんないんだったら、とりあえず真ん中いっときゃいいんじゃね? と、完全肉食者の猫のボクは思ってしまうんだよなぁ。


ツキノワグマも白黒動物だよね(ほぼ黒だけど)。胸にある白い三日月のような模様を「月の輪」っていうんだけど、なんであそこだけ白いのか、月の輪の模様が何のためのものなのかについては、さすがのグーグル教授もよく知らなかったみたい。そんなこともあるんだぁ。
にしても、ヤル気スイッチ紛失組のツキノワグマって、ちょっとカワイイ。山の中で会ったら全力で逃げるけどね(人間は、クマに背中を見せて逃げちゃダメだよ。すぐに追いつかれるから)。

ボクが研究のために行った「多摩動物公園」では、哺乳類以外にも白黒の生き物が見られるよ。たとえば鳥の仲間の「シロフクロウ」。このフクロウは超珍しく昼行性で昼間に行動するらしい(白夜がある北極圏で暮らしているから)。オスの体はほぼ真っ白なんだけど、メスには地上で卵を温めるときに天敵に見つけられないように黒い斑点模様がある。映画「ハリーポッター」に登場したフクロウで、めっちゃ気が荒いらしい。

ほかにも、昆虫館には白地に黒い模様の「オオゴマダラ」とか、黒地に白い模様の「シロオビアゲハ」なんていう蝶々の仲間がヒラヒラ飛んでいる。

さて、そしてボクの家にも「ねぎま先輩」という白黒動物がいらっしゃる(先輩には敬語だ)。ねぎま先輩は背中からしっぽにかけて黒く、何となく黒いパンツを履いてるみたいに見えるのが特徴。パンツ先輩なんていうと殴られるけど、大丈夫ですよ、履いてますから。(?)

ところで、先月、ぐでんぐでんでまったくヤル気のなかったヤギは、向きこそ違えど、ほぼ同じ位置でやっぱりヤル気なく、というか、さらにヤル気なく寝そべってました。白黒とは関係ないのだけれど、あそこまで徹底してヤル気なくいられると、不思議と心惹かれるもんだなぁ。