【夢旅 035】都会のマルシェで森を食べたよ

 

 

 

 

ほら、みんなも食べてみれ〜

2週連続で旅をしないで家であんなことこんなことを考えて、というか、あまりの暑さで何も考えることなくただただボーゼンとしてたような気がする。というか、ボーゼンとしてた。だって、マジ暑いんだ。つい数日前は、となりの八王子で39℃超え、この辺りでも38℃なんて気温になったんだ。この数字、風呂のお湯の温度じゃないよ。気温、空気の温度。38℃とか39℃ってさぁ、犬や猫の体温と同じか、それよりも高い温度だよ。なんなの、コレ。いや〜ん。

人間の平熱は、だいたい36℃〜37℃くらい。犬の平熱は38.5℃〜39℃くらい、そして、ボクたち猫の平熱は38℃〜39℃くらいなんだ。ただでさえ人間みたいに汗かいて体温を調節することがほとんどできないボクたちだから、体温を超えるような気温の中では何をどうすればいいのか、もうさっぱり分からない。だから、仕方なく薄暗く誰も知らない秘密基地に入ってじっとしちゃう。ときどき心配そうにボクの名前を呼ぶホーリーの声が聞こえるけどガン無視する。声も出さず身動きもせず、ただじっと暑さが収まるのを待つ。半日くらい行方をくらますなんてことはザラだ。暑いときはとにかく動かない。

でも、このまま秘密基地でじっとしてたら「旅猫」じゃなくて「宅猫」になっちゃう。それはマズイ。なんとしても宅猫はいかんいかん。

先週は1日も休まず押入れにつくった秘密基地にいました。秘密基地がボクの職場のように思われそうだし、1日も休まずじっとしてたってことは、毎日休んでたってことになるし、場所をばらしちゃったら「秘密」じゃなくてただの基地になるけど、細かいことを気にしちゃいけない。
今週も1日も休まず押入れにつくった秘密基地にいました。秘密基地がボクの職場………って、だからぁ、宅猫になったら毎週3行で終わっちゃう。ん? もしかして、3行で終われば毎週ラクか?

でも、ボクはやっぱり「旅猫」でありたいので、3週間ぶりに旅をしてきたよ。
どこに行ったのかって?
渋谷。
……………

そんな近いとこ旅じゃないってか?
チッチッチッ、分かってないなぁ。旅とは遠く離れたところに行くことだと思ってるアンタたち、耳の穴かっぽじってよぉ~っく聞けっつーの(少々乱暴な言葉でごめんあさーせ)
あのね、旅は距離じゃないんだよ。日常とは違った場所でいつもと違う経験をして、自分の中に吹く新しい風を感じること。それが旅ってもんなんだよ。遠いとか近いとか、距離なんでどーでもいいの。

「めっちゃ近くで楽だから一緒に行こうって言ったの、ぽんずさんだよね。」と、ホーリー。
「……………」と、うつむくボク。はい、確かに言いました。遠くに行くのはめんどくさいから、
近場で済まそうとしました。でも、それが何か?
いいじゃありませんか、どんなにささやかでもいつもと違うことしたし、微風かもしれないけど新しい風も感じたし、行き先は渋谷だけど旅は旅なの。電車にも乗ったし飛行機も見たの。(結局、旅の定義が小さくなったような気が…)

で、行ったのは渋谷で行われた「TOKYOエシカルマルシェ」ってとこ。そこにはまたしても森から海へがお店を出していた。まぁ、鹿ジャーキー目当てに森から海へがお店を出すマルシェばかりを選んで行ってると言えなくもないけれど。
鹿ジャーキー、もちろん食べましたとも。相変わらず美味しいねぇ、鹿ジャーキーは。ちょっとだけ太めのボク(6kgを超えてるので「ちょっと」じゃないとホーリーは言い張っている)にとって、「低カロリー」「低脂肪」の鹿肉を使った食べ物は二兎を追って二兎ともゲットの美味しさ。
森のない都会で食べる鹿ジャーキーは、でも、森の味がしたよ。

ところで、「ジビエ」って言葉を知ってる?
ジビエって、野生の鳥獣の肉を意味するフランス語で、ジビエ料理は、ヨーロッパの貴族の伝統料理として発展してきた食文化なんだ。
昔は、上流階級の貴族しか食べることができなかったから、ジビエ料理はとても高貴で特別な料理だったんだって。もちろんグーグル先生直伝。なんでも知ってるから、つい最近、ボクの特別顧問に任命したんだ。

で、なんだっけ? あ、そうそう、ジビエ。鹿肉の話だったよね。
野生の鹿は、山野を駆け巡ってるから脂肪が少なくて、引き締まった赤身の肉は高タンパクだし、鉄分やビタミンB群も多いんだ。そのうえ、家畜と違って成長ホルモン剤や抗生剤を使ってないし、食べてるものも自然のものだからアレルゲンになるようなものが少ない「低アレルギー食」でもあるんだよね。

なんか、いいことづくしのスーパーフードみたいだけど、腎臓の機能が低下してるときは気をつけたほうがいいよ。腎臓は、タンパク質が分解・吸収されるときにできる老廃物を濾過してオシッコとして体の外に出すための大事な働きをしてるんだよね。だから、タンパク質をたくさん摂ると腎臓に負担がかかっちゃうんだ。腎臓の細胞は一度壊れると二度と元には戻らないから、腎機能が低下してる猫や犬は、タンパク質の量じゃなくて質を気にしてね。赤身肉である鹿肉のタンパク質は「良質」だから大丈夫。でも、マッチョなフードファイターじゃないんだから、食べ過ぎちゃダメだよ。あ、あとね、ジビエ肉はゼッタイ生で食べちゃダメだからね、人間も猫も犬も。

過ぎたるはなお及ばざるがごとし。

この格言、天気にも聞かせてやりたい。体温よりも高いなんて暑すぎる。何事もテゲテゲ(いきなりの方言登場)がいいよねー。

 

 

しかし、こんなに暑いのにマルシェに犬はやってくる。もちろん、冷え冷えのクールベストを着たり、ムチ打ちにでもなったんじゃないかと心配しちゃうような冷え冷えクールネックを首に巻いたり、専用の小型扇風機がついたカートに乗っていたりする。
だからって、そうまでして来るかねぇ。クソ暑い中。エアコンが効いた涼しい家の中でヘソ出して寝てたほうがよくね? 水風呂に入って部屋の中でブルブルやって水撒き散らしたほうが気分よくね?(めっちゃイヤがられるけど)と、猫のボクは鹿ジャーキーを齧りながら独りごちてしまうのだった。
でも、犬たち、楽しそうだからいいのか。
おーい、渋谷の飛行機、ちょっと近過ぎじゃね? 過ぎたるはなお及ばざるがごとし、だぞ〜。