【夢旅 011】 切なくも甘い、思い出のカフェ
海と青と至福のプリン ②
先週から海の青さが気になって仕方がないんだよね。
水は透明なのに、なんで海は青いんだろう? 川は青くなかったりするけど、なんで海は青いんだろう? なんで赤とか黄色じゃなくて「青」なんだろう?
ボクが1週間ずっと「アオ〜ン、アオ〜ン!」って騒ぐもんだから、ホーリーが海の青さについてググッと答えてくれた。さすが執事。(執事のことを猫語ではホーリーっていうんだ)
そうそう、猫は青と緑は識別できるんだ。だから、海の青さがわかるんだよ。
で、なんで海が青いか。その理由は太陽の光だったんだ。
太陽の光って「赤」「オレンジ」「黄」「緑」「水色」「青」「紫」、7種類の光(虹の色)があって、青以外の色の光は海の水に吸収されちゃうけど、青い光だけはそのまんま海の深くまでいって海底の白い砂に反射するんだ。そんで、海面まで上がってきた青い光をがボクたちが見ているってこと。だから、海は青く見えるんだ。
それと、空の色。海の青さは、空の青さを反射してもいるんだ。波長が短い青い光は、波長の長い赤い光に比べて空気の中であちこちに散らばりやすいんだって。だから空が青いってわけ。なんだか犬と猫みたいだね。だって、犬は規律正しくまとまって行動するから赤で、猫は人のハナシなんか聞かないで自由でバラバラだから青、でしょ。
ってことで、なんで? が解決したらなんだか頭がスッキリしちゃった。
さぁ、このあとは絵をみて、そして、至福のプリンだーい!
お気に入りのギャラリー&カフェに暮らしている山羊の弥太郎さんとは去年知り会って、会うのは今回で2度目。デカいしガンコだし無口だし食べるの草だし、何考えてるかわかんないけど、なぜか気になる存在。いつかあの背中に乗ってみたいんだ。
でも、弥太郎さん元気?
なんて、迂闊に近づいたりすると、この強気なお但ちゃん、ドカンと頭突きしてくるから油断できない。まずは目を見てご挨拶。でも、弥太郎さんの目ってすごくミステリアスでちょっと怖いんだよねぇ…。
山羊の瞳孔(黒い部分)って四角いんだけど、これにはワケがあって、肉食動物の接近をいち早く発見するためで、すごく広い視野を持ってるんだ。で、いつでも瞳孔が水平になるように眼球がグルグル動くっていうからビックリ。逆立ちしても(山羊は逆立ちしないけど)瞳孔は水平で、左右の目でぐるっと360℃見渡せちゃう。弥太郎さん、後ろもバッチリ見えるんだなぁ。これはますます油断できないなぁ。
ボクは猫だから絵が描けないし、絵の意味も価値もぜんぜんわからない。もしかしたら、5千円の絵と5千万円の絵の違いすらわからないかも…。でもね、絵をみるのはキライじゃないよ。日本の古い絵とか動物の絵とかね。絵本も好きさ。このあいだ、”エルフィー” っていう犬が出てくる絵本を読んで泣いちゃった。絵だけをみて泣いちゃったことはないけど、いつか自然と涙が出てくるような、そんな絵に出会えたらいいな。
絵をみたあとはおやつタイム!ちょっと硬めで、ミルクと卵の味が濃い手作りのプリン。若くてちっちゃいけどしっかり者のお姉さんが鼻歌を歌いながら(かどうかわからないけど)ひとつひとつ作る至福のプリン。猫のボクはスイーツには興味ないけど(猫は甘さを感じない)、このプリンだけは特別なんだ。ミルクと卵と優しさがたっぷり入ってるからね。
でも、ボクはいま、すごく切ない。だって、ね、このプリン、もう食べられないんだ。お姉さんがカフェを閉めちゃったんだ(ギャラリーはやってるよ)。絵のことや料理のこと、もっともっとお話ししたかったのに…。至福のプリンを丼で作ってもらいたかったのに…。もう食べられないなんて悲しすぎるぅ~! せめて、作り方だけでも聞いとけばよかったなぁ。レシピがあればホーリーに作らせたのに。まぁ、ホーリーが作ったらただのプリンになると思うけどね。
最後に食べた至福のプリンには、ちょっとだけ塩味が効いてたような気がしたんだけど、あれは海の味だったのか、それともボクの涙の味か、それは永遠の謎。優しさのめぐみ、至福のプリンはボクの切なくも甘い思い出の味になっちゃった。