一般食のペットフードは総合栄養食に劣る?
おうちのわんちゃんやねこちゃんの食事を選ぶ際、最初に総合栄養食かどうかを確認する飼い主様は多い。この選び方だと一般食は、そもそもフード選びの選択肢に入ることすらできないことになる。そこで、今回は総合栄養食と一般食について改めて比較し、そこに優劣があるかどうかを考えてみたい。
確かに総合栄養食の定義は、新鮮な水と一緒に与えるだけで健康を維持できるよう、栄養バランスを調整されているフードのことである。しかし、栄養バランスが調整されていると言っても、わんちゃんやねこちゃんのために必要な栄養素がすべて含まれ、完璧なバランスで調整されたフードとまでは言い切っていない。そのため、総合栄養食は完璧なフードとは言えず、これに比べて一般食が劣っているとは私は考えない。
そもそもペットフードは、ペットフード公正取引協議会によって、総合栄養食、間食、その他の目的食に分類される。総合栄養食はさらに水分含有量によってドライ、セミモイスト、ウェットの3つに分けられる。間食はそのままの意味でおやつやスナックが該当し、鹿のめぐみで言えば野生鹿ジャーキーがここに含まれる。その他の目的食はその目的によって、一般食、栄養補完食、カロリー補完食、副食、療法食、ペット用サプリメントに分けられる。この情報だけを見ると、総合栄養食だけが栄養バランスを調整された特別なフードに見えるかもしれない。しかし、フードを選ぶ際にはこの表面的な情報だけではなく、総合栄養食が何を元にどうやって栄養バランスを調整しているのかまで冷静に考えてほしい。まず、「栄養バランスが調整されている」とはどういうことかというと、現在の栄養学と獣医学の情報を元に米国飼料検査官協会(AAFCO)が作った基準を満たすように作られたフードという意味である。栄養学も獣医学も現段階ですべてが解明されているわけではなく、これから分かってくることや新たに見付かる必須の栄養素も出てくる可能性がある。しかし、現在の情報を元にしている基準を満たすように作っていては、これらを盛り込んだフードを製造することはできない。そのため、総合栄養食は栄養バランスが調整されているが、現段階で完璧とは言い切れないのが事実である。続いて、栄養バランスを調整するには添加物が必要になってくるという点に注目してほしい。栄養素は様々な食材に少しずつ入っているため、ただの食べ物の寄せ集めでは総合栄養食の基準を満たすことはできない。その結果、添加物を加えることで数値を調整していくことになる可能性が考えられる。つまり、安全、安心なフードを選ぶために無添加であることを基準にされる方も多いが、総合栄養食である以上、添加物を避けるのは難しいということになる。逆に言えば、調整していない一般食は添加物不使用であることも多い。鹿のめぐみの一般食もその一例である。このように一つずつ紐解いていくと、総合栄養食が優れているとも、一般食が劣っているとも、一概には言えないことが分かってくる。
以上より、一般食と総合栄養食に明確な優劣があるとは言い切れないと私は考える。