動物が群れる理由、群れない理由

動物には、大きな群れで生活しているものも、単独で生活しているものもいます。なぜでしょうか。草食の動物を例に紹介します。

 草食動物は肉食動物に見つからないよう隠れなくてはなりません。森に住む草食動物は、木々の間に潜んで隠れますが、大きな群れだと誰かが見つかって襲われやすいので、小さな群れか、単独で生活するのがよいのです。

 また、森の中で隠れて棲むには、小さな体の方が有利です。ところが、体が小さいと体積の割に表面積が大きいので、熱がすぐ逃げてしまいます。体温維持のためには、栄養価の高いものを効率的に食べなくてはなりません。ドングリや果物など、栄養価が高い実がなる木は、森の中に散らばっています。栄養価の高い木の葉は食べられるとすぐには再生しません。大きな群れだと、すぐに食べ尽してしまいますが、小さな群れや単独で生活していれば、資源を持続可能な形で使っていけます。このように、食料事情の面からも、森の中では小さな群れか単独が良いのです。ほぼ単独で生活するニホンリスやニホンカモシカはその典型です。

 一方、草原に棲む草食動物の場合はどうでしょう。アフリカの草原にいるシマウマやヌーなど草丈より大きい動物は、すぐ肉食動物に見つかってしまいます。そこで、群れることで目を多くして、肉食動物を早く見つけて逃げることが必要になります。群れていれば、もし見つかって襲われても、自分が助かる確率は高くなります。草の栄養価は高くありませんが、大量にどこにでもありますから、大きな群れでも大丈夫です。また、草は消化しにくいので、大量に食べてお腹に溜め、ゆっくり消化するしかありません。そうすると体は大きくなり、ますます隠れることができないので、群れることになるのです。

 こうした理由で、森林にいる動物は「小型」で、「単独」か「小さな群れ」となり、草原にいる動物は比較的「大型」で、大きな「群れ」となるのです。

 

<一般社団法人倫理研究所「職場の教養」誌に「野生の教養」というタイトルで掲載された文章を加筆・修正し、写真をつけました。>

群れるシカ(宮城県金華山島)