【夢旅 023】 元保護犬の幸せにまみれた元保護猫
“家族”って、いいよね!
ボクは犬がキライじゃない。っていうか、大好きだ。
猫だけど犬が好き。特に、「元保護」っていう条件付きの犬が大好きなんだ。彼ら元保護犬にはめっちゃシンパシーを感じる。犬と猫って全然違う生き物だけど、元保護同士ってことですごく仲間意識が持てちゃうんだよね。
今回は、ボクが元保護犬に囲まれて犬まみれになった一日のお話だよ。
まだ桜の花が残る土曜日、千葉県長柄町の里山の合間のだだっ広い草地に関東はもちろん、静岡や大阪など、遠いところからも元保護犬たちがワラワラと集まってきたんだ。100頭くらいいたと思う。オドロキだよね。犬が100頭ってだけでもすごいなぁって思うのに、元保護犬が100頭なんだもん。もうひとつのオドロキは、彼らの多くが純血種ってこと。
保護猫の場合だと、ボクみたいに日本猫でひとくくりにされるいわゆる「雑種」がほとんどで純血種はあんまりいない。そのことについて猫と犬は逆なんだなぁ。って言ったら、それを隣で聞いてたホーリーが「ぽんずさん、それはね、ここにいる犬たちの多くが “鳥猟犬” に分類される犬たちで、鳥をターゲットにした猟をする犬たちだからなんだよ。例えば、猟師に鳥の居場所を教えて鳥を追い出すのがポインターやセター、猟師が鉄砲で撃った鳥を回収するのがレトリーバーっていうふうに鳥猟をするために作られた犬たちが集まってるから、どうしたって純血種が多くなるんだよ。」って説明してた。
ナットク!
だけど、ホーリーにそんなふうにキチンと説明されるとなんかムカつくんだよなぁ。ホーリーのくせにってね。(何度も言うようだけれど、ホーリーとは猫語で「執事」って意味だからね)
「猟犬」って聞くと、なんだかデカくて強くて怖いイメージってあるでしょ。あったんだ。そういう先入観みたいなものが、ボクには。でもね、この日、そんなものは水平線の彼方に吹っ飛んでいったね。ポインターもセターもレトリーバーもハスキーもサモエド柴犬もみんな(ハスキー、サモエド、柴犬は鳥猟犬じゃないよ)いいヤツなんだ。猫懐っこくてわりとおしゃべりで。ゴールデン・レトリーバーってヤツは、とにかくおっとりしててよく笑うんだ。何が楽しいのかさっぱりわからないけど、ずっと笑ってる。ポインターとかセターはとにかくよく走る。けっこう気温の高い日だったんだけど、ずっと向こうの端からダァーーーーーーッて走ってきてビュンッてすれ違ってダァーーーーーーッて走り去ってく。右から左、左から右、前から後ろ、後ろから前……。ずっと走ってる。お前バカじゃね?って思うくらいハァハァ言いながら走ってる。
激走する犬、笑う犬、挨拶を交わす犬、爆睡する犬、年老いてもへそ天で甘える犬、体に障害があってもそんなのカンケーねぇって感じで動き回る犬……。ボクの周りにはいろんな犬がいて、ボクは一日中犬まみれになってた。大きな犬に顔をベロベロなめられて「犬くせ〜!」って思ったりしたけど、イヤな気分になることなんかなかったし、猫にイジワルをする犬もいなかった。ホントに気のいいヤツばっかりだったなぁ。
近くでホーリーが家族写真の撮影をしてたからなんとはなしに眺めていたら、どの家族もとんでもなく幸せそうな顔してるのに気づいたんだ。犬も人も。どの家族もどの犬もどのママもどのパパもみんなみんな体じゅうから「一緒にいて楽しい〜!ビーム」が出てるんだ。これにはすっごいビックリした。
だって、ここに集まった犬たちはほぼすべて「元保護犬」でしょ。ってことは、保護される前の時間を経験してるわけだよね。大切な人に見捨てられるっていう。(ボクも経験してる)
前にホーリーが教えてくれたんだけど、鳥猟犬が保護されるのはいろんなケースがあって、猟期が終わったからっていう理由で猟師が山に捨てるケース、犬が歳をとったとか引っ越し先で飼えないからんなんていう身勝手な理由で飼い主が保健所や動物愛護センターに持ち込むケース、犬が増えすぎて手に追えなくなる多頭飼育崩壊などなど。で、どれもこれも犬にとっちゃハンパなく辛いケースだよね。幸せの「し」の字もないよね。信じてた人に見捨てられるんだから。ポイッて。そんなシンドイ経験してんのになんでこんなに幸せそうな顔できるんだろう。まぁ、理由はひとつしかないと思うけど。やっぱ、家族に愛されると犬も猫も、たぶん人も変われるんだろうなぁ。家族っていいよね! 無条件に信じ合える家族って、やっぱ幸せなんだよね。
と、ボクはふと我にかえって自分のことを考えてみた。ボクは元保護猫。生まれて4ヶ月くらいのチビ猫のときにホーリーとワミさんと出会って、一緒に暮らしはじめて(正確には一緒に暮らしてやってる)今年で8年目。ボクは今、どんな顔してるんだろう。ここにいる犬たちみたいに幸せそうな顔してるのかな。どうよ? うーん、わからん。ちょっと不安になったから、撮影してるホーリーの横にしれっと座ってみた。すると、いきなりホーリーがカメラを向けて「ぽんずさん、ハイ、チーズ」って、チーズかよ、昭和かよ。って、猫は笑えねーんだよ。
まぁ、どんな顔してるかわかんないけど、ボクはボクなりに幸せに暮らしてるし、それなりに幸せそうな顔してるんだと思ってるよ。ホーリー、お前もな。