柴犬の保護犬「ほたる」

「ほたる」 推定16歳。柴犬。女の子。 6年前、栃木県山中に小型犬80頭、柴犬6頭ブリーダーによる遺棄事件があった。

全頭繁殖犬。つまり人間にとって必要が無くなりお金にならなくなり遺棄された子達。 小型犬は車の中で全頭窒息死。この小型犬は鬼怒川に流され柴犬6頭が生き残った。 その頃、私は栃木県保護団体からお預かりボランティアをやっていた。

その時、保護された行き場の無い柴犬を預かることになった。そしてその子は1週間ほど我が家でお預かりし、すぐに高幡不動のご夫婦に譲渡され今も幸せいっぱいに暮らしている。 その後、間もなくもう1頭お預かりすることになり、この子が我が家の柴犬「ほたる」である。 お預かりして直ぐ病院へ行き検査をやる。子宮に膿が溜まり緊急手術!取り出した子宮は破裂寸前。推定年齢10歳。8〜10回ほど出産させられているでしょうとドクター。 暫く我が家で暮らしていた。

その時、我が家には7頭の保護犬と保護猫5匹が居た。しかし、ほたるがあまりにも大人しくて優しく可愛い子だったので、我が家の家族にしようと決めた。 餌をあげると「こんな美味しいご飯を食べていいの?」と躊躇しながら私の顔を何度も見ながら少しづつ食べていた。 オシッコもウンチも家の中で何処ででもやってしまう。きっとお散歩にも連れて行ってもらえず餌も粗末なものを食べていたのだと思う。先住犬にも優しく穏やかで6年経った今もほたるが吠えたのは数回。

 

ある日、お散歩の途中、40歳前後の男性が突然「この柴犬違う!普通の柴犬じゃない!この柴犬は値段がつかないよ。何処で買ったの?」と聴かれた。 私はその男性に事情を説明した。そして私は「ほたる!売らないよ。これから皆んなと楽しく過ごしていこうね。」そう言うとほたるは目を細めて幸せそうな顔をした。 そして、別の日。散歩をしていると、色んな小型犬が歩いて来る。ほたるは立ち止まり通り過ぎても振り返り見えなくなるまで、ずうーっと見ている。きっと何頭も何頭も子供を生み授乳が終わらないうちに離されていたに違いないだろう。小型犬を見る度にほたるは取られてしまったパピーのことをいつもいつも思い出しているのでしょう。 私は「ほたる、お腹が痛くて痛くてよく我慢したね。辛かったね。ほたるのパピーは今頃きっとみんな元気に幸せにしてるよ。」そう言ってたくさんたくさん抱きしめる。ほたるはジーッと静かに優しい顔をする。