チャチャ日記 4

歳のせいなのか、最近は朝5時半に目が覚めてしまう。
今はその時間がちょうど日の出時間だけれど、年末はたとえ5時半に起きても外は真っ暗闇で7時近くまで待たなければチャチャの散歩に出掛けられなかったので辛かった。
夜明けと共に散歩に出掛けられるこの季節は気分もウキウキする。
他の犬が散歩をしている様子を見ていると、ご主人様に従ってテンポよく歩いているのに、我が家の愛犬ときたら何度も立ち止まり地面に鼻を摺り着けるように歩く。
ジャックラッセルテリアはもともとキツネ狩りのためのつくられた狩猟犬だからどうしても匂いが気になるのだろう。
歩く姿ははまるで掃除機みたいだ。
姿勢よくすいすい歩いてもらえないものかと綱を思い切り引いても掃除機ポーズは止められない。
木の根元、電信柱の付け根、道の曲がり角などは特に入念に匂いを嗅ぐ。
人間は情報を得る時、80%を視覚に頼るというが、犬は40%が嗅覚、30%が聴覚、10%が視覚だそうだ。
人間の100万倍もあるという嗅力だから人間には見えない情報がたくさん見えているのだろう。
どんな犬が通ったのか?年齢はいくつか、雄だったのか雌だったのか?体調はどうか?などなどをきっと読み取っているのだ。
チャチャが必死に匂いを嗅いでいる時、ふと自分がスマホを見ていることに気が付き、人間も同じようなものだなぁと思った。
電信柱でおしっこの匂いを嗅いでいるのはきっと僕がメールやフェイスブックを確認しているのと同じなのだ。
「チャーリーの奴、元気だったんだな。」
「クロちゃん、最近いい飯食ってるじゃないか。」
「ポンタの奴、生意気なこと言いやがって!」などなど・・・・
もの凄く気になる匂いがある時は、どんなに綱を引いてもビクともしない。
そういう時は憧れのあの娘のフェイスブックを見ているに違いない。
「モカちゃんじゃないか。元気だったんだ、会いたかったぁ~、いい娘だなぁ~~。」とうっとりしている。
綱を強く引くと「今、メッセージを書いてるところ!」と言って動かない。
読み終わるとしっかり片足を上げておしっこを振りかけて(いいね)サインを送っている。
1時間半の散歩から帰ると、朝ごはんの時間である。
チャチャには鹿肉のドッグフードに鹿肉のミンチを混ぜて与えている。
僕が3センチ角くらいの鹿肉ミンチを取り出して炊事台に乗せると、その瞬間に離れたところから吹っ飛んでくる。
チャチャは背が低いから見えないはずなのに炊事台のどこに鹿肉があるのかがわかるらしい。
鹿肉は他のドッグフードと比べるとかなり割高である。
しかし、愛すべきチャチャと末永く一緒に暮らすためにヘルシーな鹿肉ドッグフードを止められない。

執筆者

本田 亮 ほんだ りょう
CMプランナーとして、ピッカピカの1年生など数多くのキャンペーンを企画・制作してきた。
サラリーマン転覆隊隊長として、世界中の海山川を旅し、その体験をアウトドア雑誌などで連載中。
環境マンガ家として、様々な社会問題を取り上げ楽しくわかりやすく解説している。