チャチャ日記11
チャチャのお陰で早起きと朝の散歩がルーチンワークになってしまった。
チャチャを飼うまでまるで知らなかった早朝の街では様々な生物が活発に行動している。
中でも驚いたのはハクビシンだ。
頭上で黒い影が動いたことに気が付いて空を見上げると地上10m程の電線の上をハクビシンが歩いていた。
電線から電線、電線から電柱、マンションのベランダへと迷うことなくスルスルスルスルと忍者のように移動していく。
きっとそのルートを毎日辿って繁華街に通うのだろう。
人間たちが眠っている間にハクビシンは僕らの寝室の目と鼻の先を通過しているのだ。5階の部屋だって彼の散歩道だと思うと仰天だ。
鼻のいいチャチャは街のあちこちで隠れている生物を見つけるのが得意だ。
自動販売機の下のネズミ、巣から落ちたスズメ、寒くて動けなくなったシジュウカラなど、これまでに色んな生き物を見つけ出してきた。
中でもよく出会うのは猫である。
チャチャが足を止めて仕切りに車の下を覗き込むので確かめてみると猫がいた
チャチャはどんな生物に対しても友好的だから「ねぇ一緒に遊ぼうよ!」と尻尾を振りながら近づいていく。
猫の方はと言うと「なんだよ、うるせぇな、こっち来るんじゃねぇぞ、猫パンチ食らわすぞ・・・」と陰険な目つきで睨み返す。
それでもさらに近づこうとすると「シャーーッ」と唸り声を上げて飛び掛かろうとする。
僕は慌ててリードを引くことになる。
早朝の定番と言えばカラスである。
ゴミ袋を破り残飯を引っ張り出し食べているカラスとよく出会う。
きちんと網を掛けておけばいいのにと思うのだが、カラスは網の隙間からゴミ袋を器用に引っ張り出してしまう。
カラスは賢いのでチャチャが紐に繋がれていると高を括って決して逃げることがない。
チャチャと程よい距離を保ちながら悠然と餌を漁り続ける。チャチャが近づこうとするとスキップするように1m程離れてチャチャの顔を見る。
そして「どうせ紐に繋がれてんだろ。捕まえられるもんなら捕まえてみな!」とからかってくる。
チャチャはどんな生物に対しても友好的だけど、最初から戦闘的な生物もいる。
それは猿だ。
僕の別宅がある湯河原町では猿が町に降りてくる。友好的なチャチャが尻尾を振りながら近づいていく時、猿は最初から戦闘モードだ。
屋根から飛び降りて来てチャチャの目の前の交通標識に掴まってグラングランと揺さぶりチャチャを威嚇する。
物凄い迫力である。
まさに犬猿の中。何百年も前から憎しみ合っていることがよくわかった。
散歩の途中で色んな生物と出会いながら、チャチャも徐々に大人になってきた。
「友達は選んで付き合わなきゃ。」と最近は思っているようである。