【夢旅 026】 海から森へ、森から海へ、猫の島へ

 

 

 

東北横断歩き旅 ②
試練はつづくよ、出羽の旅

薄暗くなってからテントを張り、朝、まだ人が活動を始める前に撤収するのが野宿の鉄則。ボクたちは早々にテントを撤収して5:40に出発した。こどもの日が近いせいか、海辺の街には大量の大漁旗がはためいてた。まるで漁師になったような気分で歩く。(ボクは猫なのに魚を食べないのだけれど)

ところで、「こどもの日」って、なんのための日だか知ってる?5月5日は、江戸時代から休日だったらしいんだけど、1948年に国民の祝日として法律で定められたんだって。それで、なんのための日かっていうと、「こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかるとともに、母に感謝する」ための日なんだそうだ。そういえば、母の日も母に感謝する日だし、自分の誕生日も母に感謝する日だよね。母親って、ありがたい存在なんだなぁってしみじみ思い、心の中で母猫に「ありがとう」を言う。

道は海岸線から内陸へ。鶴岡の市街地に向かう国道を歩く。由良峠までのゆるい上り坂を歩いていると、ホーホケキョとウグイスが鳴き、ケーンとキジが叫んだ。「クマ出没注意」の看板もある。ツキノワグマって、マジで走ると時速50kmくらいなんだけど、ボクたち猫も同じくらいのスピードで走れるんだ。100mを7秒ちょっとで走っちゃう。人間の世界記録なんかよりダンゼン速いんだ。猫をなめんなよ。(めっちゃ昭和! って思ってたら、公式サイトがあって驚いた)

由良峠の気温は9℃。山形ではまだ冬が健在だった。しかも、雲がだんだん厚くなってきて時折雨も降ってきた。寒いのはまだガマンできるけど、雨は困る。猫は水にめっぽう弱いんだ。濡れるのは大っキライだ。

途中通りかかった「鶴ヶ岡城址」は、江戸時代には庄内藩の藩庁だったところ。本丸や二の丸跡は公園になっていて、日本さくら名所100選に選ばれるくらい桜がキレイなところらしい。もうすぐ咲き始める頃なんだろうけど、今はまだ蕾。赤いドームと白壁が特徴の「大寶館(たいほうかん)」の前に立っている赤いポストは、オブジェかと思ったら、なんと現役。どのくらいの年数ここに立ってるんだろう。

この辺には寄り道したいところがいっぱいあるんだけど、雲行きがますます怪しくなってきたから先を急ぐ。そして、11:30頃になると雨がいよいよ本降りになってきた。濡れるのイヤだよー、寒いよーってことで、「もう十分歩いたし、雨じゃ野宿する場所を探すのも大変だから家に帰ろう。」と提案するも、ホーリーはガン無視。黙々と歩き続けている。普段は頼りないくせに歩き旅に出るとやけにタフガイになるんだよなぁ、アイツは。あー、ゴハン食べてあったかい布団で昼寝したいよー。

雨の中をトボトボと歩くこと2時間、宿坊が立ち並ぶ通りに出た。「なぁホーリー、きょうは宿坊に泊まろうぜ。屋根と壁のあるあったかい部屋で寝ようぜ。」とささやいてみた。が、やっぱりガン無視。この辺は羽黒山の神域、そうそうやたらと野宿できるようなところじゃない。アンタいったいどこに泊まるつもりだよ。「なぁホーリー、せっかく山形に来たんだから、きょうの晩ごはんは庄内豚を食べよーぜ、屋根のあるところで。」と、別角度からアタックしたら、「庄内豚」にはピクッと反応した。それもそのはず。長い距離を歩くと消耗も激しいから肉と脂が欲しくなる。トンカツ、唐揚げ、しょうが焼きが食の基本3原則で、そこに焼き鳥、フライドチキン、ハンバーグあたりが割って入ってくる。なので、当然のように庄内豚に反応しちゃうんだね。

でも、結局ボクたちはその後2時間も歩き続け、羽黒山キャンプ場にたどり着いた。ずっと上り坂だったせいか、汗だくなんだけど、冷たい風が吹くと震え上がるくらいに寒い。って、ゴールデンウィークだっていうのにあちこちに雪があるじゃん! 東北恐るべし!

この夜、ボクたちは雨から逃れるために “屋根のある” 炊事場の中にテントを張って寝た。近くでしきりに鹿が鳴いていた。

翌朝、あまりの寒さとキツツキのドラミングの音で目が覚めた。きのうの雨がウソのように空はキッパリと晴れ、雪山がまぶしい。キャンプ場を出てしばらくは山の中の静かな道を歩いた。雪の残る斜面につくしが生えていたり、桜の花が咲いていたり、冬と春が同居してるのがおもしろくて歩いていて飽きない。

この日は時間が経つにつれてグングン気温が上がって9時には20℃を軽く超え、畑の中の道を汗だくになって歩いた。ホーリーに「水ちょうだい。」って言ったら、あっさりと「ないよ。」って、マジか。道の先見たってコンビニはおろか、自販機すら見当たらないんだぞ。ボクがあれほど田舎をナメるなって言ったのに…。なんで猫の話を聞かないかなぁ。田舎じゃ自販機に出会うことなんて少ないし、あったとしても全品売り切れなんてこともあるんだよなぁ。

しかも、最上川沿いの国道は歩くには怖すぎた。大型トラックがボクたちのすぐ横をブワンッて過ぎていく。半分トンネルみたいなところ(覆道っていうらしい)があって、車が来たときの音と風が凄くてハンパなく怖い。でも、一本道だから逃げるに逃げられない。まさに命からがらって感じで歩道のない国道をボクたちはひと言もしゃべらずにただひたすら歩いたんだ、5時間も。もう、暑さと緊張で喉カラッカラ。水くれ〜。

夕方4時過ぎに「道の駅とざわ」に着いたとき、ボクたちは息も絶え絶えでヘロヘロ。とりあえず水をガブ飲みしたあと、まだ少し明るかったけど、なぜか全面的に韓国風の建物の裏にテントを張った。そして、肉たっぷりの晩ごはんを食べて、ボクたちは落ちるように寝てしまった。

 

<旅の2日目>

天気:晴れのち冷た〜い雨
行程:由良海岸〜由良峠〜鶴ヶ岡城址〜羽黒山大鳥居〜羽黒山五重塔〜羽黒山キャンプ場
歩行距離:30kmちょっと(雨はイヤだ!)
宿 :羽黒山キャンプ場。屋根のある炊事場にテントを張る(スッゲ〜寒っ! 鹿うるさっ!)

<旅の3日目>

天気:キッパリ晴れ
行程:羽黒山キャンプ場〜最上川左岸〜川の駅 最上峡くさなぎ〜道の駅とざわ
歩行距離:30kmちょっと
宿 :道の駅とざわ。建物の裏にテントを張る(何かと韓国風な道の駅)

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